完全制御型植物工場

総合評価 ★★☆☆☆
次世代農業に関する専門知識を養いたい方へ!

書名:完全制御型植物工場
著者:高辻正基
出版:オーム社
出版年:2007年11月
ページ数:125 (モノクロ)
大きさ:21cm
ISBN:978-4-274-20472-2

レビュー

これまでにいろいろな農業の手法を『菜園書籍レビュー』を通してご紹介していますが、今回は最先端の農業=植物工場に関する本を紹介してみたいと思います。

農業は他の分野と比較して特に保守的で、数値的な理屈よりも『長年の勘』に頼る部分が多く、また3Kや野暮ったいイメージもあり、それが新規就農の障壁になっている現状があります。

今回紹介する完全制御型植物工場は、それとはまったく異なる野菜作りのアプローチであり、『科学的な視点で植物の成長を完全に制御』することを特徴としています。

これまでの農業は(たとえ施設栽培であっても)日照条件や気候、季節などの自然要因の影響を受けることが避けられず、異常気象が続けば不作に陥るなど安定性に欠ける部分がありました。

完全制御型植物工場では、自然の影響を全く受けることなく、年中安定して、完全無農薬の野菜を作ることが出来るメリットがあり、次世代の農業技術として私も特に興味を持っています。

具体的には、水耕栽培の技術を基本として窓の無いビルの一室のような場所で、LEDをはじめとする人工照明、温度、湿度を厳密に管理することにより、通常の露地栽培と比べ約6倍の成長速度でサラダ菜をはじめとする野菜を栽培することが出来る上、路地では不可能な立体的な栽培、超密集での栽培も可能で、養液成分や光の波長、その他条件を制御することによってその野菜の栄養価までもを制御することが出来るのだそうです。

また、土を使わないクリーンな環境のため、完全無農薬も当然可能で、食の安全と生産効率の最大化を見事に達成できる次世代技術であることに疑いありません。

現在のネックはその生産コストで、設備の運営費(特に照明)が膨大になってしまうため、なかなかペイしないというところがあるのですが、近年の急速な省エネ技術の発展により、非常に高価だったLED照明も比較的安価に手に入る環境も整い、そのネックも徐々に解消されつつあるようです。

本書はかなり内容が専門的で誰もが楽しめるような本ではないのですが、ある程度科学に関するバックグラウンドがあって、この種の新技術に深い興味がある方には参考になる本だと思いますので、総合評価は2点とさせていただきました。

良いか悪いかは別として『旬』という概念、『土づくりこそ、農業の基本』といえる時代が終わるのはそう遠くないのかもしれません。


完全制御型植物工場