本当は危ない有機野菜

総合評価 ★☆☆☆☆
有機野菜の安全性について幅広い価値観を養いたい方へ!

書名:本当は危ない有機野菜 リサイクル信仰が生み出す「恐怖の作物」 「無農薬で安全」に隠されたウソを暴く
著者:松下一郎、エコ農業のウソを告発する会
出版:徳間書店
出版年:2009年1月
ページ数:237 (モノクロ)
大きさ:19cm
ISBN:978-4-19-862671-6

レビュー

今回も前回に引き続き、有機農法関連ではあるのですが、今回はノウハウ本ではなく、有機農業に対して批判的な意見を持った方が著した本を紹介してみたいと思います。

有機農法の詳細(自然農法、一般農法との違いなど)については以前書いたので省略しますが、有機野菜だからといって必ずしも安心安全であるといえるのかは、別問題であると私は考えています。

イメージが良い順に、有機栽培>無農薬栽培>一般栽培という一般認識で、農薬は悪いものであるという絶対的なイメージをもっている方も多いのだと思いますが、農薬は本来、安全性が実験的に十分検証され、国が認めたものだけが使用を認められていることを考えれば、ある種の菌を薬で抑制することによって食中毒の発生を未然に防止するなど、本来的には農薬は食の安全に繋がるものであるととらえることも出来ます(リスク<ベネフィット)。

そのような観点から、農薬の不使用に異論を唱える本が出版されたとしても大筋で納得できるだろうという期待でこの本を読み始めたのですが、残念なことに、ちょっと私の期待を裏切る内容でした。

筆者は『有機農法では動物の排泄物や生ごみを肥料として使用しており、これらは当然汚く、いろいろな病原体が入っており、そんなものを栄養として育った野菜を食べたら、ノロウイルスなどの感染症に罹患するか、いまはなんともなくても何年かあとに病気になる恐れがあって危ない』ということを主張しています。

また、国家レベルで有機農法を現状のまま推進しようものなら、国家を揺るがす大規模な感染症パニックが近年発生するだろうと考えており、その考えの詳細をこの本にまとめています。

私がこの本を読んで、根本的なレベルで問題があると感じたのは「有機農法の大半は未熟な堆肥を使用している」と筆者が思い込んでいることです。

有機農法の基本である堆肥作りは、病原菌を無害化し、有機質を無機質に変換することによって、ほぼ無臭で安全な形に変化させる過程を必要とするのですが、もし、筆者が言うように牛の糞や尿、産業廃棄物を無処理でそのまま畑にまこうものなら、その臭気によって害虫が多発し、野菜が虫害を受け、商品性を失って流通に乗らなくなるばかりか、病原菌が野菜に感染して根を腐らせ、出荷可能な状態に至る前に、枯れてしまうということは、有機農法に取り組んでいる方ならば誰でも知っている常識と思います(有機野菜では基本的に農薬を使用できないので、病気が発生したら抜いて捨てるしかありません)。

この本はそのあたりの詰めが少々甘く、市場に流通している大半の有機野菜は未熟で粗悪な堆肥や化学汚染物質を肥料に使用しているから、基本的に有機野菜は危険で、食べると将来的に恐ろしい病気になるということが強い調子で延々と書かれているのですが、現実的にはありえないような、かなり誇張した表現が多く、その強すぎる語り調子は好みの分かれるところではないかと思います。

読み物としては面白く書籍ランキングでも人気の本書ですが、菜園書籍としてはもう少し有機農法の本質を踏まえた現実的な内容で、理論立っていたほうが良いように思いましたので、総合評価は1点とさせていただきました。


本当は危ない有機野菜