防虫ネット選びのポイント

このページではプランター菜園に最適な防虫用被覆資材の選び方のポイントについて解説します。

一般に「被覆資材」と呼ばれるものには、不織布、寒冷紗、ビニール、防虫ネットなどがありますが、それぞれに特徴があるので目的にあったものを選んで使う必要があります。

そこで防虫ネットについての詳細を書く前に、浅く広くまずは被覆資材全般について紹介してみたいと思います。

被覆資材の目的、種類

被覆資材は一般に、防虫、防寒、防鳥、遮光などを目的に使用されます。

古くから、寒冷紗や不織布、ビニールが用いられてきましたが、現在は技術の発達により防虫性に優れた『サンサンネット』をはじめとする『防虫ネット』が開発されています。

各種被覆資材の主な特徴は以下のとおりです。

・寒冷紗
防寒、防鳥、防虫、遮光、特に黒色のものは強い遮光効果があり、白色のものは弱い遮光効果。

・不織布
主に湿度調節を目的として使用される。(防寒、防鳥、防虫、遮光効果もあり)

・ビニール
主に防寒を目的として使用される

・防虫ネット
主に防虫を目的として使用される

これだけを見ると、不織布や寒冷紗があれば万能のように思えますが、実際にはそうではありません

寒冷紗や不織布で防虫すると確かに防虫効果はあるのですが、その遮光効果によってどうしても日照不足による生育不良が起こりがちになってしまうのです…

そこで開発されたのが『防虫ネット』で、一般に90%程度の透光性を有し通風性も良好なため『植物の生育に影響を与えずに防虫することが出来る』上、ネットを掛けたまま水やりすることも出来、最初の取り付けと追肥のとき以外は付け外しの手間がかからないなどのメリットがあります

家庭菜園で無農薬栽培を行う場合には害虫が多くなる前に「防虫ネット」をあらかじめ入手しておきましょう

防虫ネットのポイント

『防虫ネットは防虫ネットでしょ?だって、テレビや本でも防虫ネットを張りましょう!ということはあっても、どんな防虫ネットを、なんて細かく解説しているの聞いたことないし…』と思っている方も多いのではないでしょうか?

実際、ホームセンターに行ってみても、ネットの種類自体は「防鳥ネット」「防虫ネット」「防獣ネット」「防風ネット」「遮光ネット」などなど…ほんとうにたくさんあるのですが、『防虫ネット』というくくりでみてみると、1種類しか置いていない場合がほとんどで、あったとしても同種の防虫ネットがサイズ違いで置 いてある程度です。

しかし、防虫ネットはその『目合い』、『繊維の太さ』、『銀糸の有無』、『素材』、『編み方』、『空隙率』などの違いによって、それぞれ異なった性質があり、理想的には、自分が防除したい虫の種類や環境に合わせて最適なものを選ぶ必要があります。

Yu-Rinお勧めの防虫ネット

防虫ネットメーカーはかなり限られていて、日本ではダイオ化成株式会社と、日本ワイドクロス株式会社のものが広く流通しています。

詳しい解説は後に書きますが、比較的安価で、入手性の良いものをまず2つご紹介します。

ダイオ化成株式会社「ダイオサンシャインS-2000

この製品は1mm目合いで、ポリエチレン製、透光率90%、銀糸入りです(虫がキラキラ光るものを嫌う性質を利用して高い防虫効果を発揮します)。通販だと1.8m×5mのサイズからしかないようですが、近所にホームセンターがあって、小さいプランターを中心に栽培する方は1.35mx5mのものを買い求めると良いと思います。

日本ワイドクロス株式会社「防虫サンサンネットEX-2000

こちらも、目合い、原料、透光率、銀線などの商品特性はダイオサンシャインS-2000と同じで、性能的にはほぼ同等の商品です。ホームセンターなどではどちらか一方が置いてある場合が大半だと思いますので、入手しやすいほうを買っておけばどちらでも問題ありません。

次に、最新の技術を利用しているため入手性が悪く、価格も高価、でも性能的には理想的!という商品をご紹介します。

日本ワイドクロス株式会社「サンサンネット ソフライト SL-3200

現在、Yu-Rinが愛用している防虫ネットです。この製品は先に紹介したEX-2000の目合いを0.6mmにした上位製品で、ダイオにも類似の上位製品があるのですが両方入手して1年間比較試験した結果、こちらのほうが明らかに使いやすく、非常に高い防虫効果、良好な野菜の生育を示したため現在はこれ以外利用していません。

このブログを見ていただいている方に積極的にお勧めできないのは、技術的に新しく値段が一般の家庭菜園向けとしては高すぎるからです。

とはいっても、よく流通している1mm目合いではそれなりに虫が入ってしまうのも事実。ここが悩ましいところなのですが、まだ防虫ネットを全く使用したことが無い初心者の方はとりあえず入手性の良い安価な1mm目合い製品を使ってみて、防虫ネットの性能に不足を感じてからこちらの製品にアップグレードすることをお勧めします。

防虫ネットへの過信は禁物


防虫ネットを使えば完全に防虫できるものと思いがちですが、実際にはまだまだ改良の余地があることも事実です。

現在1mm目合いが防虫ネットとしては標準とされていますが、1mmではアブラムシ、キスジノミハムシ、アザミウマ類などの小さな害虫を防げないばかりか、逆に保湿効果、保温効果、また害虫の天敵(=テントウムシなどの益虫)に対する遮蔽効果のために、(実際にはまれではありますが)無被覆と比べ被害が逆に増える場合もあります。

0.4mm目合いのネットも開発されていますがこの場合高い防虫効果が期待できる反面、通風性、透光性が悪いために、植物の生育、外観、味に悪影響を与えることが避けられません。

現在、ネットメーカーでは、原料の最適化、繊維の微細化、編み方の工夫などによって、0.2mm以下の目合いで高い防虫効果と、通風性、透光性を併せ持つネットの開発研究が行われています。

こうしたネットが市販されればいまよりはるかに簡単に無農薬野菜を作ることが可能になり、一般の野菜市場でも無農薬野菜が標準に、そして農薬栽培は過去のものになるかもしれません

以降の記事は最新の防虫ネット研究(研究論文)に関するレビューです。一般向けとしては専門性が高すぎるかもしれませんが、興味があれば読んでみてください。菜園初心者の方はここまで読んで頂ければ必要十分だと思いますので、以降は無理に読まなくても大丈夫です

防虫ネットに関する最近の研究レビュー

目合いの細かさに関して

防虫ネットにおいて最も重要なのが、防虫ネットの目合い(=メッシュ)で、目合いが細かいほど小さな虫を防除でき、防虫効果が高いのは当然といえます。

製造技術の進歩によって微細化が進み、現在上市されている中で最も細かい(=防虫効果が高い)ものは0.2mm程度ですが、趣味で家庭菜園を楽しむ一般ユーザーにとっては入手性が非常に悪く、また高価でもあるため、最も一般に普及しているのは1.0mm目合いの防虫ネットです。

近畿中国四国農業研究センターの田中らは防虫ネットの目合い(0.6、0.8、1.0、2.0mm、なし)と食害の関係について報告しています(資料)。

それによると、食害の大きさは予想されるとおり「ネット被覆なし>2>1>0.8>0.6mm」の順となり、0.6mmではほとんど食害被害は発生しなかったとしています。

また一般に、目合いが細かすぎると温度や湿度が上がってしまうことにより、生育に悪影響を与える場合があるといわれていますが、0.6mm防虫ネットはその影響も軽微であるとし、0.6 mm防虫ネットの総合力の高さが評価されています。

しかしその翌年、同研究チームは0.6mm防虫ネットについてさらに詳しい検証を行い、0.6mm防虫ネットでも完全な防虫は困難で、特に、ハダニやアザミウマ類などの微細害虫による食害については無被覆群と差がなく進入阻止効果が全く認められなかったとし、害虫の「完全な防除」には『他の技術』と組み合わせることが必要(防虫ネットだけでは困難)としています。

0.6mm防虫ネットに、農薬以外の『他の技術』を組み合わせた代表的な例として、簡易太陽熱土壌消毒が挙げられます。

埼玉県農林総合研究センターの研究報告によると、コマツナを連作するとキスジノミハムシなどの害虫生息密度が高まり、1mm防虫ネットだけでは十分な防除効果が認められないとしていますが、簡易太陽熱土壌消毒と0.6mm防虫ネットを組み合わせることにより、安定した防除が可能としています。

本研究は全開放型ハウスでの栽培を前提としたものですが、プランター栽培の場合も、定期的に土をビニールに入れて密封し、太陽光熱処理(夏季、晴天で1~3日程度)を行って0.6mm防虫ネットで被覆すれば同様な効果が期待されます。太陽熱処理の代わりに熱水土壌処理を行ってもほぼ同様な効果があるとされていますので、夏季以外はこの方法を活用するとよいでしょう。

また全く別の例として、防虫ネットと『害虫の天敵』を組み合わせて活用するという興味深い試みも高知県農業技術センターを中心に行われ、一定の成果を挙げています(資料2資料3)。防虫ネットで物理的に大きな害虫を遮断し、進入の避けられない小さな害虫は天敵(益虫)がやっつけてくれるというわけです。

この考え方を応用し、プランター栽培でもしアブラムシが問題となっているならどこかでテントウムシなどの安全な天敵を捕まえてきて(実際には、それが難しいのですが…)防虫ネットの中に放しておけば防虫効果を飛躍的に高めることが可能かもしれません。

先に、目合いは0.2mm程度まで開発されていると書きましたが、研究レベルでも超微細ネットについてはまだそれほど多くの例が蓄積されていない状況です。近畿中国四国農業研究センターは最近行った研究(資料2)で、最新の極細糸を使用した0.4mm防虫ネットは従来品に比べ風通しが良く(ただし循環扇は必要)、気温上昇を最低限に抑えることが可能で、通常防虫ネットでは防除が困難とされる超微細害虫(タバココナジラミバイオタイプQ)の効果的防除が可能であることを明らかにしています。

空隙率、素材、繊維の太さ

微小目合い防虫ネットに関連して、空隙率と風通し、温度上昇抑制効果について研究した成果が報告されているのでついでに紹介しておきます。

福岡県農業総合試験場の報告によると(資料資料2)生育不良の原因となるネット被覆による温度上昇の原因は通風性の悪さにあり、その通風性は空隙率(間隙率)に関係していて結論として、空隙率が60%以上あれば昇温はほとんど問題にならないとしています。

つまり、防虫ネットを選ぶ際には空隙率>60%が選定の指標になることを示しています。

繊維の太さ、素材の違いについても同じ資料の中で触れられていますが、これらの違いは結局のところ空隙率の差異となって表れ、間接的に通風性、昇温抑制性能に影響していることが分かります。

編み方による違い

『編み方』については通常の平織りとトリコット編みを比較した研究成果が公開され(資料)、トリコット編みの一定の優位性が示されてはいますが、まだ研究途上の段階で、客観的に見て必ずしも十分な改善がなされているとはいえない状況です。

銀糸の効果

最後に、『銀糸』の効果について紹介します。

防虫ネットには製品によって銀糸が織り込まれているものとそうでないものがあります。一般に、アブラムシなどの害虫が光の反射を嫌うことは古くから知られていましたが、防虫ネットに織り込む程度でどれほどの効果があるのかは長く検証されていませんでした。

最近になって、ようやく銀糸の効果について報告があったので紹介します。

実際にはただの銀糸ではなく、特殊な光反射資材を織り込んだ資材で行った研究のため、一般に流通している銀糸入り防虫ネットの有用性に繋がるものであるかどうかは微妙なところですが、報告によると、害虫が通るような目合いのネットであっても、光反射資材を防虫ネットに織り込むことによって害虫は攪乱され、害虫進入阻止に効果的であったと結論されています。

以上、防虫ネットについて最近の研究を駆け足でレビューさせていただきました。趣味として楽しむプランター菜園の参考になれば嬉しいです