家庭菜園の基本となる野菜への水やりは一見簡単なようで意外と難しく、農学の分野では「水やり三年」とも言われるほど、高度な知識と技術が要求される作業です。
このページでは、プランター菜園における正しい水やりの方法に加え、初心者の多くが陥りがちな失敗についてご紹介したいと思います。
初心者の多くが陥りがちな水やりの失敗
本題に入る前に、初心者が必ずといっていいほど陥る水やりの失敗について触れておきたいと思います。
はじめての家庭菜園で、やる気満々の初心者の大半が陥る間違いは、水のやりすぎです。
家庭菜園へのモチベーションが高い初心者ほど、水やり作業自体が楽しく感じ、頻繁に水を与えてしまうため、結果的に根が酸欠状態となり、さらに雑菌が土の中で繁殖して根が腐り、最終的に枯らしてしまうというパターンです。
野菜の根に必要なのは水と栄養(肥料)であると思われがちですが、それ以上に重要な要素は酸素なので、空気が根に触れない状態が続けば酸欠となり枯れてしまうのは当然といえます。
すなわち、土表面をしっかり乾かすことこそが重要という認識を持つことが、プランター菜園成功の鍵になります。
プランター菜園においては、土表面が乾いてからプランターの排水口からしっかりと水が流れ出るくらいたっぷりと水を与えることが大切です。
土表面が「湿る程度」ではなく、「排水口から水が流れ出すまで」たっぷりと水やりを行う必要がある理由は、土の中の雑菌を洗い流し、更に、プランターのスノコの下の古い水を排出して新鮮な水に入れ替えるためです。
畑とプランターの違いを意識した管理を
家庭菜園でも市民農園などの畑を区画単位でレンタルして楽しむ方が増えてきましたが、家庭菜園は家庭菜園でも、畑栽培と、プランター栽培では全く環境が異なり、適切な水やりの方法も異なります。
- 畑栽培
自然環境とシームレスに繋がっているため自然の恩恵を受けることが可能。すなわち、ミミズなどの土壌生物が多く存在し、枯れ葉やその他の有機物が自然に混入することで不足した土壌の栄養を補ったり、逆に、過剰な栄養が微生物によって分解され除去されるエコシステムが成立している。 - プランター栽培
自然には存在しえない人工的な閉鎖環境であり、本来自然から与えられるべき恩恵を、人為的にコントロールすることが必要。根を張るスペースも限られ、土が乾燥しても地下から水分が補給されるようなことが一切無い。
以上のような環境の違いを踏まえると、プランター菜園における適切な水やりや施肥は、畑栽培以上に重要であることが理解できるかと思います。
水やりタイミングの2つのパターン
プランター菜園における水やりには2つのパターンが存在し、それぞれにメリット、デメリットがあります。絶対的にどちらがよいということは無いので、ご自身の生活スタイルに応じ、無理のないほうを選びましょう。
- 定期型(一定間隔で水やりを行う)
メリット:毎日の水やりを生活サイクルに組み込みやすく、水のやり忘れが起こりづらい。
デメリット:天候によっては、一時的に過湿、過乾燥となることがある。 - 要時型(土の表面が乾いたら水やりを行う)
メリット:確実に根が空気に触れるため、野菜の生育上は理想的。
デメリット:定期的なチェックが煩雑で、水やり自体を忘れてしまいやすい。
定期型の場合は、最低でも半月に1度は土表面の状態をチェックし、その乾燥度合いから、3日おきが適切なのか、半日おきが適切なのかを事前に見極めることが大切です(気候や野菜の種類によって大きく変化します)。
要時型の場合、普通の培養土では水分量確認のために毎回土に手で触れる手間が生じますが、ゴールデン粒状培養土のように色の変化で乾燥状態がある程度分かるような培養土を使用すると比較的少ない手間で理想的な生育環境を作ることが出来ます。
Yu-Rin
初心者のプランターには緑色のコケが生えていることが多々ありますが、コケは常に水分がある環境で生育するため「コケが生えている=土を十分に乾かせていない証拠」といえます。レタス類など、根腐れしやすい野菜を栽培する際には特に注意しましょう。
水やりに最適な時間帯
水やりを行う上で、気を付けたいもうひとつのポイントは、水やりを行う時間帯です。
真冬の夕方に水やりを行うと、夜の間に凍ってしまい、吸収可能な水分が実質的に0となってしまうだけでなく、水が凍る際の体積膨張によって根が圧迫されて傷み、枯れてしまう恐れがあります。
逆に、真夏の昼間に水やりを行うと、強い日照によって水が高温となり、根が傷む原因となる他、葉の表面に付着した水滴のレンズ効果によって葉を傷めてしまう原因ともなります。
季節を問わず水やりに最適な時間帯は早朝と覚えておけば間違いありません。但し、乾燥が激しい夏季は必要に応じ朝と夕方、1日2回の水やりを行うようにすると良いでしょう。