発芽試験の方法:家庭で出来るタネの発芽率の調べ方

家庭で簡単に出来る!発芽試験の方法

このページでは、家庭でタネの発芽試験を行うための方法を紹介しています。タネには寿命があるので、特に古いタネを使用する場合は、念のため事前に発芽試験を行い、発芽力がどの程度あるのかを種まき前に確認しておきましょう。

家庭で発芽試験を行う際のポイント
  • 蓋つきのガラス製シャーレとキッチンペーパーを準備して、室内、室温で行う
  • 試験に用いるタネは多ければ多いほど正確な発芽率の算出が可能
  • 簡単に実験出来るので、小学生~中学生の夏休みの自由研究にもおススメ!

有効期限=タネの寿命ではない

タネ袋の裏には「有効期限」が明記されており、基本的には期限内にタネを使い切ることが推奨されています。ただ、家庭菜園においては購入した野菜のタネを1シーズンで全て使い切ることは難しく、タネを保存しておいて翌シーズン以降にまた再利用するケースがほとんどだと思います。

タネ袋の裏に記載されている有効期限(播種期限)がタネの寿命であると勘違いされがちなのですが、実際にはそうではなく、以下のページで紹介しているとおりに保管すれば、有効期限を5年以上過ぎても、家庭菜園では全く問題なく使用できる場合が大半です。

野菜のタネの保存方法 野菜のタネの保存のコツ

但し、タネの保存条件や期間によっては、タネが寿命を迎えて発芽しない場合や、発芽率が大幅に低下している可能性があるので、古いタネを使用する際は、シーズン前に予め発芽率を確認しておくと安心です。

発芽の三条件と発芽試験の基本的な原理

タネが発芽するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。これらを発芽の三条件(又は、発芽の三要素)と呼びます。

  1. 温度
  2. 水分
  3. 酸素

発芽の三条件に土が含まれていないことからも分かるように、土が存在するかどうかは発芽には関係が無いので、発芽試験においても土は使用しません。

また、タネが適度な水分と酸素に触れていなければ発芽しないので、蓋つきのシャーレの中に、湿らせたキッチンペーパーを入れ、その上にタネを置いて観察すると、発芽の三条件をすべて満たすことが出来、家庭でもかなり正確な発芽検定を行うことが出来ます。

発芽に光は必要ないの?

タネには光がないと発芽しづらい好光性種子や、逆に暗くないと発芽しづらい嫌光性種子があります。このことからも光の存在が発芽に影響を与えることは明らかなのですが、好光性種子は完全に遮光しても時間を掛ければ発芽し、嫌光性種子は遮光しなくても一定数は発芽します。つまり、発芽の「しやすさ」には影響するのですが、必須条件ではないので、発芽の三条件に光は含まれません。

野菜が発芽しない6つの原因とその対策:発芽の三条件とは? 野菜が発芽しない6つの原因とその対策:発芽の三条件とは?

必要な道具の準備

シャーレ(ペトリ皿)

ガラス製でフタ付き、底の表面が平らなものであれば何でも構いません。この記事では内径69 mm、高さ20 mmの、以下のガラス製シャーレを使用しています。

ピンセット

シャーレ内にタネを並べたり、発芽後のタネを取り除くために使用します。間引き用のピンセットが手元にあればそれを流用して構いません。以下の商品のように、先端の内側にギザギザが付いているステンレス製のものだと、万能で作業性が良く、錆びずに何年も使えるのでおススメです。

キッチンペーパー

家庭にあるもので構いません。今回は二枚重ねて使用しますが、極厚のものであれば、1枚でも構いません。

スポイト

定期的にキッチンペーパーを湿らせるために使用します。霧吹きでも代用できますが、霧吹きの勢いでタネの位置が動いてしまうことがあるので、タネの無い場所にスポイトで水を垂らしてキッチンペーパー全体を湿らせる方法がおススメです。

発芽試験の手順

キッチンペーパーを円形にカットする

鉛筆でシャーレの底面の型を取り、ハサミで一回り小さく切り取ります(2枚)。

発芽試験:キッチンペーパーをカットする
シャーレの底に切り取ったキッチンペーパー2枚を重ねて敷く

シャーレの底に隙間なく切り取ったキッチンペーパーを2枚重ねて敷きます。左側にあるのはフタです。

発芽試験:シャーレの底にキッチンペーパーを敷く
キッチンペーパーを水で湿らせる

スポイトで水を垂らして、キッチンペーパー全体を水で湿らせます。シャーレを傾けても水が溜まらず、キッチンペーパーが水を保持している状態が最適です。

発芽試験:キッチンペーパーを湿らせる
ピンセットでタネを並べる

タネが互いに触れ合わないように、ピンセットで丁寧にタネを並べます。今回は正確な発芽率を算出するためにタネを100個使用しますが、タネが生きているかどうかだけを簡易的に確認したい場合は、5個~10個程度を並べるだけでも構いません。

発芽試験:タネを並べる
フタをして、室内、室温で1日静置する

シャーレにガラス蓋をかぶせて半密閉状態にし、室内、室温で、遮光せず、そのまま静置します。

発芽試験:フタをする
発芽したタネの数を記録する

毎朝シャーレを観察し、キッチンペーパーが乾いているようであれば水分を補充します。タネの種類によって異なりますが、翌日~数日後には下の写真のように発芽します。毎日、発芽したタネの数と日付を記録しておきましょう。

発芽試験:24時間後

タネから少しでも発根しているものは発芽したものと判定します。下の写真であれば、一番左下にあるタネ以外はすべて発芽しています。

発芽試験:発芽したタネ
発芽したタネをピンセットで取り除き、観察を継続する

発芽したタネをピンセットで1つ1つ丁寧に取り除きます。スポイトでキッチンペーパーに水分を補給し、ガラス蓋をかぶせて翌日まで静置します。

発芽試験:更に1日静置する
STEP6とSTEP7を変化が無くなるまで繰り返す

タネが発芽してから、日ごとの発芽数の推移を記録し、変化が見られなくなったら発芽試験は終了です。

発芽試験:最終日
発芽率を算出する

発芽率を以下の式で算出します。
発芽率(%) = 発芽したタネの数 ÷ 使用したタネの数 × 100

今回は、100個のタネを使用して、100個が発芽したので、発芽率は100%であることが分かりました。

手持ちのタネの発芽率を調べてみよう

前述の手順に従って手持ちのタネの発芽率を調べてみましょう。今回は例として、発芽率が低く、発芽の揃いも悪いことで知られる「シソ」の発芽率を調べてみます。タネ袋の裏には「65%以上」との記載がありますが、実際にはどの程度の発芽率があるのでしょうか?

1日目
発芽検定開始

今回はシソのタネを100個使用しました。

シソ1日目
2日目
変化なし

3日目
発芽8個、未発芽92個

発芽検定開始から、48時間後、8個のタネが発芽しました。発芽したタネはピンセットで取り除きます。

シソ発芽試験3日目
シソ発芽試験3日目
4日目
発芽83個、未発芽17個

4日目には75個のタネが一斉に発芽。まだ途中ですが、すでに公称値の65%を大きく超える発芽率に達しています。

シソ発芽試験4日目
シソ発芽試験4日目
5日目
発芽91個、未発芽9個

8個のタネが発芽。

シソ発芽試験5日目
シソ発芽試験5日目
6日目
発芽96個、未発芽4個

5個のタネが発芽。

シソ発芽試験6日目
シソ発芽試験6日目
7日目
発芽97個、未発芽3個

1個のタネが発芽。

シソ発芽試験7日目
シソ発芽試験7日目
8日目
発芽99個、未発芽1個

2個のタネが発芽。この後、2日間観察しましたが、これ以上の変化は見られなかったので発芽試験終了としました。

シソ発芽試験8日目
シソ発芽試験8日目

結果を表にまとめてグラフ化してみよう!

得られた結果を表にまとめると以下のようになります。

発芽数(日次)発芽数(合計)
1日目00
2日目00
3日目88
4日目7583
5日目891
6日目596
7日目197
8日目299
9日目099
10日目099
シソの発芽試験結果

このままでは傾向が掴みづらいのでグラフ化してみましょう。

タネ袋の裏には発芽率65%以上との記載がありましたが、実際には99%であることが分かりました。また、4日目に発芽のピークがあること、発芽日数は3日~8日とかなり大きなバラツキがあることも分かりました。

発芽試験のQ&A

タネの有効期限内でも播種前に発芽試験を行ったほうが良いですか?
有効期限内、未開封であれば、タネ袋の裏に記載されている発芽率が維持されているはずなので、あえて、自分で発芽試験を行う必要はありません。有効期限を過ぎたタネを使用する際や、タネをまいても一向に発芽せず、その原因がタネにあるのか、環境にあるのかを特定したい場合に行ってください。
有効期限を過ぎたタネから育った野菜は安全ですか?
有効期限を過ぎたタネであっても、発芽後の生育や、野菜の安全性への影響は全くありませんのでご安心ください。
大きなタネの発芽試験はどのように行えばよいですか?
ほとんどのタネは、フタ付きガラス製シャーレとキッチンペーパーで、発芽率検定を行うことが出来ますが、落花生など、特に大型のタネの発芽率を調べたい場合は、フタ付きのプラスチック製タッパーに、脱脂綿を敷き詰めて行うと効率的です。
硬実種子の発芽試験を効率的に行う方法はありますか?
アスパラガスなど、種皮に透水性が無いタネ(‎硬実種子)は、普通に発芽試験を行うと非常に長期間の観察が必要となり効率が悪いので、事前に催芽処理を行うことをお勧めします。催芽処理には、物理的にヤスリなどで削る方法、薬剤で化学的に処理する方法などもありますが、逆にタネを傷つけて発芽率を低下させてしまう要因にもなるので、24時間ほど水に浸して吸水させてから発芽試験を行うことをお勧めします。

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