葉菜は寒いほど糖度が増し、食味が良くなることが知られています。例えば、ほうれん草はあえて冬季にビニールトンネルで保温しながら栽培し、収穫前にビニールを外して「寒締め」することにより、より市場価値の高い「寒締めちぢみほうれん草」となります。
このページでは、厳寒期に美味しい野菜を栽培する上で欠かせないビニールフィルムの選び方、注意点、効果について解説しています。
ビニールトンネルを用いた冬季栽培は技術的難易度がやや高いため、家庭菜園にある程度慣れてから挑戦することをお勧めします。
ビニールフィルムのメリット・デメリット
野菜は外気温が低いと発芽率が低下したり成長が遅くなってしまうため、厳寒期に栽培する場合はビニールフィルムでプランター全体を覆い、保温する必要があります。
まずは、ビニールフィルムのメリットとデメリットについて理解しておきましょう。
- メリット
厳寒期でも野菜を栽培することが出来る。
様々なビニールの種類(素材、厚さ)が存在するため、正しく製品を選べばデメリットの影響を受けづらい。 - デメリット
通気性が全く無い。病気の発生を避けるため定期的な換気が必須。
水を全く通さないため、水やり時にはビニールを一度外す必要がある。
日中に温度が上がり過ぎると、葉焼けの原因となる場合がある。
ビニールフィルムの素材と特徴
ビニールフィルムには様々な素材が使われていますが、現在は主に農ビ、農PO、農サクビが広く流通しています。
それぞれの素材の主な特徴は以下のとおりです。
- 農ビ(農業用ポリ塩化ビニール)
現在、農業用ビニールとして最も広く使われている素材。他の素材に比べ保温性が高く、トンネル栽培だけでなく、ビニールハウス用にも農ビが広く使われています。構造中に塩素原子を含み、焼却による環境汚染悪化が懸念されることから、近年はリサイクルが積極的に進められています。 - 農PO(農業用ポリオレフィン系特殊フィルム)
農ビに代わる低環境負荷素材として、近年急速にシェアを拡大しているのが農POです。ポリエチレン(PE)とエチレン酢酸ビニル(EVA)の配合比率や厚さ、表面処理の工夫などによって農ビに迫る保温性を有するタイプ、逆に温度が上がり過ぎないクールタイプなど、様々な特性の製品が販売されています。 - 農サクビ(農業用エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム)
光線透過率に優れ、埃が付着しづらい。保温性は農ビや農POに劣るものの、非常に安価。
ビニールトンネルの効果(実測データ)
プランター菜園における、ビニールトンネルの保温効果を実際に検証してみました。結果は、以下のグラフのとおりです。
測定条件:小松菜を栽培中のポリプロピレン製レリーフプランターの4隅に支柱を立て、0.075 mm厚の農ビで隙間なく完全に密閉し、定期的に温度を計測。
天気:晴れ一時曇り(12時頃、雲が出て一時的に日光が遮断された為、プランター内温度が低下)
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冬季でも外気温より10 ℃以上高い温室効果を得ることが可能
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直射日光が当たらなければ温室効果は殆ど無い(夜間や天気が悪い日の防寒手段にはならない)
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プラスチックプランターは断熱性に乏しいため、完全密閉でも適度に放熱がなされ、日中でも葉焼けするほどの高温にはならない
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水分が揮発しないため、1週間程度水やりをしなくても土の湿度は高い状態が維持され、葉もみずみずしい状態に保たれる
当サイトで使用している製品
プランター菜園ではプランターからの放熱が多いこともあり、野菜の冬季プランター栽培には最も保温性能の高い「農ビ」がお勧めです。
厚さは0.05~0.1 mmが多く流通していますが、大好き!プランター菜園では0.075 mm厚、185 cm幅の「モヤレスいただき」というプロ向けの製品を使用しています。
「モヤレスいただき」は非常に高機能なのですが、やや高価で販売単位も大きいため、最初は以下のような既製品を使用し、フィルムの曇りなど、性能面の不足を感じるようになってからプロ向けの製品に移行すると良いでしょう。
上手に防寒対策を行って、冬季ならではの美味しい野菜の収穫にチャレンジしてみてください!