野菜の成長促進に用いられる肥料には様々な種類がありますが、用途に応じた肥料を正しく選ぶことが大切です。
このページでは野菜を美味しく、元気に育てるための栄養源となる肥料選びのポイントを解説します。
肥料の種類
肥料には大きく分けて、無機肥料と有機肥料の2種類があります。
- 無機肥料(化成肥料、液肥、緩効性肥料など)
- 有機肥料(牛ふん、鶏糞、油かすなど)
「有機」という名前がつくとイメージが良く、なんとなく美味しそうな印象を受ける方が多いかもしれませんが、実際には有機肥料で有機栽培をしたからといって、必ずしも美味しくなるとは限りません。
むしろ、狭いスペースと、無農薬を前提とする家庭菜園においては、虫害や悪臭が発生しにくい、無機肥料(有機配合を含む)がおススメです。当サイトでも無機肥料のみを使用しています。
無機肥料にも様々な種類があるので、以下、さらに詳しく解説したいと思います。
効き目の早さの違いによる肥料の分類
無機肥料を「効き目の速さ」で分類すると、液肥(液体肥料)、化成肥料、緩効性肥料の3種類に大別することが出来ます。
- 液肥(即効性)
- 化成肥料(中間)
- 緩効性肥料(遅効性)
尚、有機肥料は一旦、土中の微生物で有機物が分解されて無機化し、その栄養が根から吸収されるので、広義では有機肥料も緩効性(遅効性)肥料の一種と考えることが出来ます。
液肥、化成肥料、緩効性肥料はそれぞれ使う目的が異なります。葉が黄色くなってすぐに栄養を補給する必要がある場合は即効性の液肥、定期的な追肥は化成肥料、長期的に安定した肥効が必要な場合は緩効性肥料といった具合に使い分ける必要があるので、それぞれ少なくとも1つずつ常備しておくとよいでしょう。
ここまで読んだ方の中には「効果は早いほど良いに決まっている」と感じる方がいるかもしれないので、少し補足しておきます。
確かに、効果がすぐに出る液肥は便利なのですが、その分、流出も早いという欠点があります。つまり、プランター菜園での日々の水やりによって、すぐに肥料が切れて栄養不足になりやすく、また、化成肥料では局所的に成分が高濃度となって、根が肥やけしてしまうことがあります。
*肥やけ:肥料濃度が高すぎることが原因で根が傷み、枯れてしまったり、生育に悪影響を与えること
緩効性肥料はあえて水に溶けづらく加工されています。溶けにくい分だけ、効き目が長持ちし、常に一定の濃度で培養土に栄養を送り続けることが出来るために失敗しづらく、特に家庭菜園初心者にはお勧めです。
野菜の成長に必要な三大栄養素
これまで説明してきたことに加え、肥料には含有する栄養(元素)の量や比率に関しても、様々な種類が存在します。
そこでまず「野菜の成長に必要な栄養素」について解説したいと思います。
植物が育つためには、窒素、リン、カリウムの3つの要素が必要で、これらは三大栄養素と呼ばれています。さらに、ごく微量必要な13の元素(マグネシウム、カルシウム、亜鉛、モリブデンなど)があり、合計16種の必須元素が全て揃ってはじめて野菜は元気に成長することが出来ます。
市販の培養土を使用して家庭で野菜を育てる場合、13種類の微量元素が不足することはそれほど多くないのですが、三大栄養素は野菜の生育に伴ってすぐに枯渇してしまうので、失われた栄養を肥料で土に戻してあげる必要があります。
特に、自然からの栄養流入がなく、毎日の水やりで土中の栄養が外部へ一方的に流れ出てしまうことが避けられないプランター栽培では、追肥を定期的に行うことがより重要となります。
三大栄養素(窒素、リン、カリ)にはそれぞれ以下の役割があります。
- 窒素
窒素は「葉肥(はごえ)」と覚えましょう。主に葉の生育を促します。
-
リン
リンは「実肥(みごえ)」と覚えましょう。実もの野菜を美味しく育てるには、リンが不足しないようにすることが大切です。 - カリウム
カリ(カリウム)は「根肥(ねごえ)」と覚えましょう。根菜に限らず、すべての野菜に共通して重要な要素です。
市販の「化成肥料」「配合肥料」にはこれらのバランスが「8-8-8」のように表記されています。表記法は決まっていて、窒素ーリンーカリの順番に100 gあたりの各要素の重量を示しています。
例えば10-8-9という表記なら100 g中、窒素10 g、リン8 g、カリ9 gが含まれることを意味します。
10-18-16、14-14-14、16-16-16など様々な種類の化成肥料が市販されていますが、家庭菜園には「8-8-8」が扱いやすくおススメです。
当サイトで使用している肥料
大好き!プランター菜園では、以下の3種類の肥料を使用しています。肥料選びの参考にしてみてください。
緩効性肥料
窒素、リン、カリの必須三要素に加え、マグネシウムがバランスよく配合された緩効性肥料。「10-10-10」ですが、緩効性なので、根が肥焼けして傷むようなことはまずありません。
毎日水やりをするプランター菜園でも、1か月おきに追肥するだけで簡単に美味しい野菜を育てることが出来ます。
化成肥料(8-8-8)
窒素、リン、カリがそれぞれ8%含まれる最も一般的な「8-8-8」の化成肥料です。ある程度信頼のおけるメーカーのものであれば、どれを選んでも特に違いはないので、入手しやすいものを購入しましょう。
成分が10%を超えるものは肥料周辺が局所的に高濃度となって根が傷みやすく、取り扱いが難しいので、必ず「8-8-8」と記載されたものを選んでください。
液体肥料
液肥の代名詞といっても過言ではないハイポネックス社の野菜専用液肥です。
有機配合で三大栄養素も均等に配合(5-5-5)されており、即効性なので1本持っておくといざというときになにかと便利です。
ジョーロ内で希釈してプランター全体に均一にまくことが出来るので(固体肥料とは異なり)根が肥やけして傷む心配がありません。