春菊はキク科のため無被覆でも虫害を受けづらく、特別な栽培技術も必要としないため、家庭菜園初心者でも簡単に育てることが出来ます。
春菊の品種には大きく分けて大葉種、中葉種、小葉種があり、それがさらに株張り型、摘み取り型に分類されます。
このページでは家庭菜園に最適な中葉・摘み取り型の「きわめ中葉春菊」をプランターで種から栽培する方法をご紹介します。
基本データ | |
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栽培難易度 | |
名称・別名 | 春菊(シュンギク)、菊菜(キクナ)、新菊(シンギク) |
科名 | キク科 |
英名 | Shungiku, Crown daisy, Garland chrysanthemum |
原産地 | 中国、地中海沿岸 |
播種適期 | 4月中旬~5月中旬、9月初旬~下旬 |
種のまき方 | 点まき |
発芽適温 | 15~20℃ |
生育適温 | 15~20℃ |
発芽日数 | 4~7日 |
最適プランター | レリーフプランター650 |
Step 1:必要資材の準備
春菊をプランターで栽培するために、まずは必要となる資材や道具を揃えましょう。
はじめての家庭菜園でどれを買ったら良いか分からない場合は、この記事で使用している以下の資材一式を購入し、記載の手順通りに育てれば初心者でも失敗無く収穫することが出来ます。
タネ
生育旺盛で、低温伸張性と、側枝の発生力が特に強く、育てやすい家庭菜園の人気品種です。中葉・摘み取り型で、長期間、収穫を楽しむことが出来、葉が柔らかく、風味が豊かで、食味も優れています。
プランター
シュンギクはそれほど多くの土量を必要としないので、レリーフプランターがおススメです。
培養土
緩効性肥料入りの粒状培養土で、保水性、通気性、保肥性のバランスに優れています。
肥料
窒素、リン、カリがそれぞれ8%含まれる、最も一般的な化成肥料です。信頼できるメーカーのものを選ぶようにしましょう。
ジョーロ
毎日の水やりに使用します。プランターの数が多くなってきたら、ホースリールの導入も検討してみてください。
Step 2:種まき
良く洗ったプランターに鉢底石を底が見えなくなるくらいまで入れる。
*新品のゴールデン粒状培養土を使用する場合、この手順は不要です。
プランターに培養土を入れ、表面を平らにならす。
*プランターのふちギリギリまで入れずに、3 ㎝程度、余裕をもって入れましょう。
*タネをまくための「蒔き溝、蒔き穴」を作る必要はありません。
点まき。レリーフプランター650なら4点、各点4粒。
培養土をタネが完全に見えなくなるまで追加する(すでにプランターに入っている培養土を「寄せる」のではなく、新たにタネの上に培養土を追加)。
*このようにするとタネをまいた部分だけが少し高くなって株元の排水性が向上し、根腐れを予防することができます。
プランターの排水口から水が流れ出るまでたっぷりと水を与える。
*ホースリールを使用する場合は水勢を弱くし、土やタネが流れてしまわないよう注意。プランターは風通しの良い日なたに設置し、発芽するまでは毎朝1日1回の水やりを行いましょう。
春菊は発芽に光のエネルギーを必要とします(好光性種子)。そのため、タネに土を掛け過ぎないように注意しましょう。
Step 3:発芽・間引き
適期なら一週間ほどで一斉に発芽します。下の写真のように双葉が完全に展開し本葉が出始めたら、各点3株を残して初回の間引きを行いましょう。
間引きの方法:株間が十分に広い場合は、苗を指でつまんでまっすぐ上に引き抜くのが最も手軽ですが、ピンセットを使うと、混み合っている箇所でも正確に間引くことが出来ます。また、密集して発芽してしまった箇所は(根が絡まり、残したい株まで一緒に抜けてしまう恐れがあるため)ハサミで根元から切り取ると安全・確実に間引くことが出来ます。
下の写真のように本葉が増えて隣の株と葉が重なり合うようになったら、最も生育の良い1株を残し、他をすべて間引きましょう。
最終的にはレリーフプランター1つあたり4株の春菊を栽培することになりますが、条まきにすることでプランターのスペースを有効活用し、大量に風味豊かな春菊の間引き菜を収穫することも出来ます。
まず、本葉が出始めたタイミングで株間を整え、以下の写真のようにします。
そのまま間引かずに栽培し、下の写真くらいに葉が込み合ったら順次間引き菜を収穫し、最終的にプランターあたり4株を残します(結果としては、点まきで最終間引きを行った後と同じ状態になります)。
最終間引きを行って、各点1株(計4株)とした春菊。
春菊は栽培期間が長期となるため、定期的な追肥が必要です。緩効性肥料なら1か月おき、一般的な化成肥料なら2週間おきを目安として追肥しましょう。追肥の際は株元を避け、プランターのふちに沿って蒔くようにすると根が肥料焼けして痛んでしまう心配がありません。
Step 4:育成・収穫
最終間引きを終えてしばらくすると、徐々に本葉が増え、株全体が大きく広がってきます。
土が見えないくらい葉が込み合ってきたら、収穫を行いましょう(下の写真は収穫適期の春菊)。春菊の摘み取り収穫は、株元から7 cmほどのところ(主枝)をハサミで切って行います。
下の写真が収穫直後の様子。主枝を切ったことで、新しい脇芽がまたどんどん成長します。
その脇芽を収穫すると、また新しい脇芽が出るので、長期間摘みとり収穫を楽しむことが出来ます(9月播種の場合、管理を適切に行えば11月の初収穫から翌年2月頃まで収穫し続けることが可能)。
尚、収穫したタイミングで次の収穫への成長を促すために追肥をしておくと良いでしょう(お礼肥といいます)。
栽培のポイント・注意点
真夏を避ける
春菊は暑さに弱く、夏の暑さでトウ立ちしてしまいます(トウ立ち=抽苔(ちゅうだい)=花芽が伸びて、葉が固くなり、食用に適さなくなること)。
そのため栽培は夏季を避け、春作なら夏前には栽培を終えるように、秋作なら暑さが和らいだ頃に種を蒔くスケジュールとしましょう。
夜間の街灯に注意
春菊は日が長くなるとトウ立ちしやすくなる性質があります。街灯や屋外灯などで夜間も明るい場所で栽培すると、適期でもトウ立ちしてしまう場合があります。
極力、夜間に光の当たらない場所にプランターを設置するようにしましょう。
春菊の豆知識
九州の春菊と、関東の春菊では見た目が違うのはなぜですか?
春菊には様々な品種が存在し、外観も大きく異なるからです。
春菊には大きく分けて大葉種、中葉種、小葉種があり、それがさらに株張り型、摘み取り型に分類されます。東日本では春菊といえば葉に切れ込みの多い「中葉種」を指しますが、九州などの一部地域では葉の切れ込みの少ない「大葉種」が今でも人気のため、同じ「春菊」という名前であっても、九州の春菊と、東京の春菊の外観は全く異なっています。
一方、家庭菜園を行う上で気を付けたいのは、「株張り型」と「摘み取り型」の違いです。家庭菜園に向いているのは「摘み取り型」です。株張り型は一般に出荷用として栽培され、株ごと収穫することになりますが、摘み取り型の場合は、このページで紹介したように葉を摘み取って収穫することが出来るため、総収量が株張り型に比べ圧倒的に多く、長い期間、新鮮な採れたて春菊を楽しむことが出来ます。
このページでは「きわめ中葉春菊」という品種を使用していますが、これは「中葉種、摘み取り型」の春菊で、低温でも良く育ち、側枝も発生しやすい性質があるため、特に家庭菜園で摘み取り収穫する場合にはお勧めです(抜き取り収穫も可能)。