防虫ネットの選び方

防虫ネットの選び方

家庭菜園で一般的な無農薬栽培においては、防虫ネットを正しく選んで、使用することが大切です。

このページでは家庭菜園・プランター栽培に適した防虫ネット選びのポイントについて解説します。

被覆資材の種類と特徴

家庭菜園用の被覆資材には様々なものがありますが、目的に応じ正しく使い分ける必要があります。

これらを混同し、寒冷紗を防虫ネット代わりに使用してしまうようなことが無いよう、まずはそれぞれの被覆資材の特性について正しく理解しておきましょう。

被覆資材の種類と特徴
  • 防虫ネット
    防虫のために使用。光の透過率、透湿性、通気性が非常に高く、野菜の生育への影響が少ないことが特徴。
  • 不織布
    透湿性が低いため、湿度調節(水分の蒸散を抑えること)を主な目的として使用される。
  • 寒冷紗
    春先・初冬の防寒や、真夏の強い日差しからの遮光を主な目的として使用。特に黒色の寒冷紗は遮光効果が高い。
  • ビニール
    厳寒期における防寒・生育促進を目的として使用される。通気性、透湿性が無いため、利用にあたっては換気や穴あけなどの工夫が必要。

これらを比較すると分かるように、温度、通気、湿度(水分)、光といった野菜の生育に関わる因子に影響せず、純粋に防虫することだけを目的として開発された被覆資材が防虫ネットといえます。

防虫ネットの選び方

防虫ネットと一口に言っても、製品ごとに異なる特性があり、その防虫性能も様々です。

家庭菜園・プランター菜園用の防虫ネットを購入する際には、特に以下の点に着目してください。

防虫ネットの選び方
  • 目合い
    防虫ネットは細い糸を編み込んで作られていますが、その編み込みの細かさを表しているのが目合いです。
    数値が小さいほど防虫効果が高い反面、通気性が悪くなるという特性があります。
    1 mm目合いは安価で、入手も容易ですが防虫効果は限定的です。
    逆に、0.4 mm以下では通風性、透光性が悪く、送風機などの設備を設置することが出来ない家庭菜園においては病気などの原因となることがあります。
    家庭菜園、プランター菜園においては0.6 mm目合いが最適です。
  • 銀糸の有無
    アブラムシをはじめとし、害虫はキラキラした光の反射を苦手とするため、一定間隔で銀糸が張られた防虫ネットのほうが、一般に防虫効果が高いとされています。
  • 透光率
    光をどの程度通すかの指標が透光率です。概ね、85%以上であれば光合成への影響は無いといえます。
  • サイズ
    使用するプランターのサイズや、防虫ネットで囲う範囲に応じた、適切なサイズの防虫ネットを購入するようにしましょう。様々な目的に利用できるように、幅が1.8メートル程度の大きめのものを数枚購入しておくと安心です。

家庭菜園にお勧めの防虫ネット

初心者にお勧めの防虫ネット

家庭菜園の初心者~中級者にお勧めの防虫ネットは以下です(0.6 mm目合い、透光率86%、家庭菜園向け)。

目合いが0.6 ㎜で防虫効果が高く、サイズも家庭菜園用(幅1.8 m、長さ5 m)のため、一般の方でも手軽に購入出来る価格となっています。隙間なく張ることで、無農薬でも大半の害虫を防除することが出来ます。

当サイトで使用している防虫ネット(上級者向け)

当サイトでは、以下の製品(1.8 m幅)を愛用しています(0.6 mm目合い、透光率87%、プロ向け)。

100メートル単位の販売で、価格も数万円となるため、一般の方にはなかなか手が出しづらいと思いますが、極細ポリエチレン糸を使用することで、0.6 mm目合いの高い防虫性能と、1 mm目合いに迫る通気性を併せ持ち、非常に薄手・軽量で取り回しも容易なことから、簡単にプランターに隙間なく防虫ネットを張ることが出来ます(厚手の製品ほど隙間が出来やすい)。

また実際に、防虫効果、使いやすさ、使用時の野菜の生育状況などについて、現在市販されている主な防虫ネットを比較試験した結果、当菜園においては特に際立って高い効果を示したこともあり、現在はサンサンネット ソフライト SL 3200以外の防虫ネットは使用していません。

防虫ネットに関する研究レビュー

必ずしも一般向けの情報では無いのですが、専門的な防虫ネットの研究成果を出来るだけ、かみ砕いて解説しています。

防虫ネットについて詳しく知りたいという方は、読み進めてみてください。

目合いと防虫性能の関係について

防虫ネットにおいて最も重要なのが、防虫ネットの目合い(=メッシュ)で、目合いが細かいほど小さな虫を防除でき、防虫効果が高くなります。

製造技術の進歩によって近年、微細化が進み、現在上市されている中で最も細かい(=防虫効果が高い)ものは0.2 mm程度ですが、趣味で家庭菜園を楽しむ一般ユーザーにとっては入手性が非常に悪く、また高価でもあるため、現在最も一般に普及しているのは1.0 mm目合いの防虫ネットです。

近畿中国四国農業研究センターの田中らは論文で防虫ネットの目合い(0.6、0.8、1.0、2.0mm、なし)と食害の関係について報告しています。それによると、食害の大きさは予想されるとおり「ネット被覆なし>2>1>0.8>0.6 mm」の順であり、0.6 mmではほとんど虫害は発生しないことが確認されています。

また一般に、目合いが細かすぎると温度や湿度が上がることで、生育に悪影響を与える場合があるといわれますが、0.6 mm目合いの防虫ネットであればその影響も軽微であるとし、0.6 mm防虫ネットの総合力の高さが評価されています。

しかしその翌年、同研究チームは0.6 mm防虫ネットについてさらに詳しい検証を行い、0.6 mm防虫ネットでも完全な防除は困難であり、特に、ハダニやアザミウマ類などの微細害虫による食害については無被覆群と差がなく、進入阻止効果が全く認められなかったとし、害虫の「完全な防除」には「他の技術」と組み合わせることが重要であるとしています。

0.6 mm防虫ネットに、農薬以外の「他の技術」を組み合わせた代表的な例としては、簡易太陽熱土壌消毒の事例が挙げられます。

埼玉県農林総合研究センターの研究報告によると、コマツナを連作するとキスジノミハムシなどの害虫生息密度が高まり、1 mm防虫ネットだけでは十分な防除効果が認められないとしていますが、簡易太陽熱土壌消毒と0.6 mm防虫ネットを組み合わせることにより、安定した防除が可能であったとのことです。

本研究は全開放型ハウスでの栽培を前提としたものですが、プランター栽培の場合も、定期的に土をビニールに入れて密封し、太陽光熱処理(夏季、晴天で1~3日程度)を行って0.6 mm防虫ネットで被覆すれば同様な効果があることが期待されます。太陽熱処理の代わりに熱水土壌処理を行ってもほぼ同様な効果があるとされていますので、夏季以外はこの方法を活用するとよいでしょう。

また、全く別の例として、防虫ネットと「害虫の天敵」を組み合わせて活用するという興味深い試みも高知県農業技術センターを中心に行われ、一定の成果を挙げています(資料1資料2)。防虫ネットで物理的に大きな害虫を遮断し、進入の避けられない小さな害虫は天敵(益虫)がやっつけてくれるというわけです。

この知見を参考にすると、プランター栽培においても、テントウムシなどの安全な天敵を防虫ネットの中に放しておくことで、アブラムシ等の防除効果を高めることが可能と考えられます。

空隙率、素材、繊維の太さについて

微小目合い防虫ネットに関連し、空隙率、風通し、温度上昇抑制効果について研究した成果が報告されているので、こちらも紹介しておきます。

福岡県農業総合試験場の報告によると(資料3資料4)生育不良の原因となるネット被覆による温度上昇の原因は通風性の悪さにあり、その通風性は空隙率(間隙率)に関係し、空隙率が60%以上であれば昇温は殆ど問題にならないと結論しています。

つまり、防虫ネットを選ぶ際には、空隙率が60%以上であることが選定の指標となることが分かります。

繊維の太さ、素材の違いについても同資料の中で論じられていますが、これらの違いは結局のところ空隙率の差異となって表れ、間接的に通風性、昇温抑制性能に影響していると考えられるため、ここでは割愛したいと思います。

銀糸の効果

防虫ネットには製品によって銀糸が織り込まれているものとそうでないものがあります。一般に、アブラムシなどの害虫が光の反射を嫌うことは古くから知られていますが、防虫ネットに織り込む程度でどれほどの効果があるのかは長く科学的に検証されていませんでした。

最近になって、ようやく銀糸の効果に関する論文を見つけたので概要を紹介したいと思います。

実際にはただの銀糸ではなく、特殊な光反射資材を織り込んだ資材で実施した研究のため、一般に流通している銀糸入り防虫ネットの有用性に直接繋がるかは微妙なところですが、報告によれば、害虫が通るような目合いのネットであっても、光反射資材を防虫ネットに織り込むことによって害虫は攪乱され、害虫進入阻止に一定の効果があったと結論されています。

このエビデンスからも、銀糸入り防虫ネットのほうが、防虫効果は高いと考えられます。

編み方による違い

同じ太さの糸を使っていたとしても、編み方が変われば、当然、防虫効果も変化することが予想されます。

調査したところ、すでに同分野では、通常の平織りと、トリコット編みを比較した研究論文が公開されていましたが、トリコット編みの一定の優位性が示されているものの、まだ研究途上の段階で、客観的に見ると、必ずしも編み方の違いによる十分な改善がなされているとはいえない状況にあります。

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