このページでは、発芽に必要な3つの条件と、タネをまいても発芽しない6つの原因と対策について解説しています。特にこれから家庭菜園をはじめる方は、事前に知識として知っておくだけでもトラブル防止に役立つと思いますので、是非参考にしてみてください。
発芽に必要な3つの条件とは?
植物が発芽するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。専門的にはこれらを発芽の三条件(又は、発芽の三要素)といいます。発芽しない原因を知る前に、まずは発芽に必要となる要素について理解しましょう。
- 適切な温度
通常、発芽温度はタネ袋の裏に記載されています。特に、夏野菜は発芽適温が高い場合が多く、キュウリやスイカの発芽適温は25℃~30℃とされています。現実的には地温が発芽適温以下でも発芽しますが、発芽までに長い期間を要したり、発芽が揃わないことがあるので、栽培する地域に応じた播種適期を守ることが大切です。 - 水
土が無くても水分があればタネは発芽します。播種後はたっぷりと水やりを行い、発芽まではタネを乾かさないよう毎朝の水やりを欠かさないようにしましょう。 - 酸素
タネが呼吸するためには酸素が必要です。極端に硬い土や、水はけの悪い粘土質の土では、発芽に必要となる空気が不足して発芽しないことがあります。市販の種まき用培養土をわざわざ買う必要はありませんが、野菜の栽培には(庭の土では無く)必ず市販の培養土を使用するようにしましょう。尚、イネ科の水生野菜など、酸素を必要とせず発芽する野菜も一部存在します。
タネが発芽しない6つの原因とその対策
- 地温が発芽適温に達していない
タネ袋の裏にある記載事項を確認し、播種適期にタネを蒔くようにしましょう。 - 水分の不足
発芽には水分が必須です。特に覆土が浅い場合や、培養土の保水性が高くない場合は、過度な乾燥が起こりやすい傾向があります。 - 酸素不足(水のやりすぎ)
発芽にはタネが呼吸するための酸素が必要です。基本的には毎朝1回の水やりを行い、雑菌の繁殖を防ぐためにも頻繁に水を与えすぎないようにしましょう。 - タネを埋める深さが不適切
発芽に光のエネルギーを必要とする野菜、逆に、光があると発芽しない野菜が存在し、それぞれ最適な覆土量は異なります。詳細についてはこの後のセクションで解説します。 - タネが休眠状態にある
タネが休眠状態にあると発芽しません(一次休眠、二次休眠)。タネは本来、植物が子孫を残すためのものですが、例えば、秋に実る野菜のタネが自然に地面に落ちてすぐに発芽してしまうと、寒くなる時期に成長しなければならなくなり、結果として枯れて全滅してしまいます。それを防ぐため、一度冬を超えて再び暖かくならないと発芽しない機構が備わっている場合があります(これを一次休眠といいます)。また、発芽に適さない過酷な条件が続くと再び休眠してしまうことがあり、これを二次休眠といいます。市販のタネを播種期限内に使用する限りにおいて休眠状態となることは通常ないのですが、自家採種したタネを使用する際にしばしば問題になります。 - タネが寿命を迎えている
タネは生きているので、当然寿命があります。タネは少しずつタネの中の養分を使いながら生きているため、一定期間経過後はその養分を使い果たして発芽しなくなります。通常、タネ袋の裏に播種期限の記載があるので、播種前に確認するようにしましょう。
MEMO
アスパラガスなど一部の硬実種子は前処理(発芽処理、催芽処理)を行うことで発芽しやすくなりますが、購入したタネを普通に蒔いても発芽しないわけでは無いので、発芽しない原因からは除外しました。また、種まきから発芽まで半月近く掛かる野菜もあるので、気長に待つことも大切です。
タネを埋める最適な深さについて
野菜のタネには好光性種子と、嫌光性種子が存在し、それぞれ、タネを蒔いた後に掛けるべき培養土の量(=覆土量=種子を埋める深さ)が異なります。
- 好光性種子(発芽に光のエネルギーを必要とする種子)
最適な深さ=5 ㎜程度 - 嫌光性種子(光が届く環境では発芽しにくい種子)
最適な深さ=タネの直径の3倍程度
好光性、嫌光性など、特に種まき時の覆土に注意が必要な野菜については、各野菜の育て方のページで個別に解説していますので、そちらも併せてご確認ください。
特に記載の無い野菜、すなわち、発芽に光の影響を受けない種子全般については、タネが隠れる程度に覆土すれば問題ありません。
好光性種子のため、覆土を浅くしながら、同時に乾燥も防ぎたい場合は?
浅い覆土でも、播種直後にたっぷりと水やりを行い、以降、毎朝水やりを行えば基本的には問題なく発芽します。発芽しない場合はその他の原因が無いかを確認してみてください。特に乾燥しやすい時期は、不織布、又は、寒冷紗で培養土表面を覆うと水分蒸発が抑制され、タネを乾燥から守ることが出来ます。