ナスをプランターで栽培するためには、整枝などの知識が必要となりますが、このページに記載しているとおりに栽培すれば初心者でも失敗無く育てることが出来ます。また、市販の苗を利用すればより手軽に短期間で収穫することも出来ます。
この記事ではナスの代表品種「千両二号」をトゲ無しに改良した家庭菜園の人気品種「とげなし千両二号」をプランターで種から栽培する方法をご紹介します。
(苗を購入して栽培する方は前半を適宜読み飛ばしてください)
基本データ | |
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難易度 | |
名称・別名 | ナス(茄子/茄)、なすび |
科名 | ナス科 |
英名 | Eggplant, Aubergine |
原産地 | インド東部 |
播種適期 | 4月中旬~5月上旬 |
種のまき方 | 点まき |
発芽適温 | 昼間:30℃、夜間:20℃ |
生育適温 | 昼間:23~28℃、夜間:16~20℃ |
発芽日数 | 6~8日 |
最適プランター | エアープランター600 |
Step 1:必要資材の準備
ナスをプランターで栽培するために、まずは必要となる資材や道具を揃えましょう。
はじめての家庭菜園でどれを買ったら良いか分からない場合は、この記事で使用している以下の資材一式を購入し、記載の手順通りに育てれば初心者でも失敗無く収穫することが出来ます。
タネ
ナスの代表品種「千両二号」を、トゲ無しに改良し育てやすくした家庭菜園の定番品種です。
プランター
ナスは野菜の中でも特に多くの栄養を必要とするので、土がたくさん入る大きめのプランターがおススメです。エアプランター600のように、別売りの支柱ホルダーが取り付けられるものだと、簡単かつ確実に支柱を固定することが出来、とても便利です。
培養土
緩効性肥料入りの粒状培養土で、保水性、通気性、保肥性のバランスに優れています。
肥料
窒素、リン、カリがそれぞれ8%含まれる、最も一般的な化成肥料です。信頼できるメーカーのものを選ぶようにしましょう。
支柱
長さ 120 cm前後、太さ11 mmのものがおススメです(セキスイ イボ竹 φ 11 mm x 120 cmなど)。
通販だと送料が高くなるので、近くのホームセンターや、園芸店で購入すると良いでしょう。表面がツルツルのものでも構いませんが、凹凸(イボ)があるもののほうが、麻ひもの固定がしやすいです。
ハサミ
整枝や、収穫に使用します。園芸専用のしっかりしたハサミを1つ用意しておくと、太い枝でも少ない力で安全にカットすることが出来、作業性が非常に良くなります。
ジョーロ
毎日の水やりに使用します。プランターの数が多くなってきたら、ホースリールの導入も検討してみてください。
Step 2:種まき
*新品のゴールデン粒状培養土を使用する場合、この手順は不要です。
*プランターのふちギリギリまで入れずに、3 ㎝程度、余裕をもって入れましょう。
*種をまくための「蒔き溝、蒔き穴」を作る必要はありません。
*このようにすると種を蒔いた部分だけが少し高くなって株元の排水性が向上し、根腐れを予防することができます。
*ホースリールを使用する場合は水勢を弱くし、土や種が流れてしまわないよう注意。プランターは風通しの良い日なたに設置し、発芽するまでは毎朝1日1回の水やりを行いましょう。
Step 3:発芽・間引き
毎日水やりを行うと1週間ほどで順次発芽します(とげなし千両二号の発芽適温は、昼間30 ℃、夜間20 ℃です。寒さが残る時期では発芽しにくいため、ゴールデンウィーク頃の種まきがお勧めです)。
双葉が完全に展開し、本葉が出始めたタイミングで、初回の間引きを行って各点3株、プランター全体で計6株とします。
間引きの方法:株間が十分に広い場合は、苗を指でつまんでまっすぐ上に引き抜くのが最も手軽ですが、ピンセットを使うと、混み合っている箇所でも正確に間引くことが出来ます。また、密集して発芽してしまった箇所は(根が絡まり、残したい株まで一緒に抜けてしまう恐れがあるため)ハサミで根元から切り取ると安全・確実に間引くことが出来ます。
しばらくすると本葉が展開します。葉が重なり合うようになったら更に1株を間引いて各点2株としましょう。
3~4枚の本葉が展開したら、最終間引きを行って各点1株、プランター全体で計2株とします。
ナスは栽培期間が長期となるため、定期的な追肥が必要です。緩効性肥料なら1か月おき、一般的な化成肥料なら2週間おきを目安として追肥しましょう。追肥の際は株元を避け、プランターのふちに沿って蒔くようにすると根が肥料焼けして痛んでしまう心配がありません。
ナスは特に多くの肥料を必要とするため、他の野菜よりもやや多めに施すようにすると良く育ちます。
Step 4:支柱立て
最終間引きを終えて、下の写真くらいのサイズになったら、本支柱を設置して、麻ひもで主枝を誘引します。
エアープランター600と併せ、専用の支柱ホルダーを使用すると、以下のように簡単に支柱を固定することが出来、強風で支柱が倒れてしまう心配もありません。今回は太さ11 mm, 長さ1200 mmの支柱を使用しています。
麻ひもによる支柱への誘引の方法ですが、下の写真のように、ナスの主枝の側はゆるくし、支柱側をしっかり結ぶようにするのがコツです。
Step 5:整枝(3本仕立て)
しばらくすると1番花の花芽が付きますが、この頃になると、各節(葉の付け根)から「わき芽」が伸びてくるので整枝を行いましょう。
ナスの整枝の方法ですが、一番花の1つ下と、2つ下のわき芽(青色)を伸ばし、それより下のわき芽はすべて手で折り取って、主枝1本+側枝2本の3本仕立てとするのがお勧めです。
実際の様子は以下の通りです。一番花(ピンク丸)の1つ下と、2つ下の節(青丸)から出ているわき芽を伸ばし、それより下の節(オレンジ色)のわき芽をすべて手で折り取ります。
残した3本の枝から出てくるわき芽は摘み取らず放任し、樹勢を維持するのがお勧めです。整枝後は以下のようになります。
Step 6:育成・収穫
整枝して、しばらく育成すると、花が咲き始めますが、無農薬の家庭菜園では通常、人工授粉をしなくても次々と自然に着果します。
しばらくするとあちこちに花が咲き、実もぐんぐん大きくなります。草勢が弱い場合は一番果だけ摘果したほうが良いこともありますが、通常は摘果の必要はありません(すべての花を着果させ収穫)。
最盛期になると、プランターでもこんなにたくさん実が付きます。
ナスが適度な大きさに育ったら、ハサミでカットして収穫しましょう。採り遅れると株に負担が掛かり、次の実が付きづらくなるため、やや小さめのサイズで若取りするのが多収のコツです。
この記事では「千両二号」をトゲ無しに改良した「とげなし千両二号」という品種を使用しているため、素手で安全に収穫することが出来ますが、トゲのある品種を栽培する場合は、厚手の軍手を使用して収穫するようにしましょう。特に、小さなお子さんがいる家庭でナスを栽培する場合は、収穫時に限らず、意図しない怪我を防止するため、トゲ無し品種をお勧めします。
Step 7:更新剪定
7月下旬~8月上旬頃になると、株が老化して、実付きが悪くなり、また、食味も落ちてきます(=なり疲れ)。また、気温が32度を超えると着果障害が発生し、実があまり付かなくなります。
そこで、ナスの収穫が期待できない8月を利用して更新剪定を行い、株全体をリフレッシュしておきましょう。8月上旬に更新剪定を行うことで、9月以降、夏ナスよりも美味しい「秋ナス」を楽しむことが出来ます!
ナスの更新剪定の方法ですが、3本仕立てにした、主枝と側枝(3本の枝)を、それぞれ1/3程度の長さに大胆にハサミでカットして行います。下の写真のように、各枝1節目の先で大胆にカットしても、約2週間後には再び花が咲きはじめ、また美味しい実をつけるようになります。光合成することが出来るように、各枝、最低1枚は葉を残すのがポイントです(下の写真は更新剪定直後の様子)。
下の写真は更新剪定5日後の様子です。各節からわき芽が伸び、新しい花芽も付きはじめています。
更新剪定から半月ほどすると、樹勢を取り戻し、再び花が沢山咲き始めます。
あとは日々の追肥と、水やりを欠かさず行えば、10月中旬頃まで美味しい秋ナスを楽しむことが出来ます。
栽培のポイント・注意点
ナスをプランター栽培するためのポイント
今回ご紹介した「とげなし千両二号」の整枝方法と栽培の要点は以下の通りです。
- 一番花のすぐ下の2本のわき芽と、主枝を伸ばし、3本仕立てとする(第1節~1番花の3つ下の節までのわき芽は早めに取り除く)。仕立てた3本の主枝から出てくるわき芽は取り除かずそのまま放任する。
- 基本的には最初の花芽を含め、すべて着果させ、収穫する(摘果は不要)。株全体の成長が悪い場合は、一番果を摘果する。
- 人工授粉は不要。
- 摘心は不要。
- 強い光を好むため、直射日光の当たる日当たりの良い場所で栽培。
- 8月上旬になったらすべての枝を3分の1程度の長さにカットし、更新剪定を行う。
- 株に負担を掛けないよう早めの収穫を心掛ける
連作障害に注意
ナス科野菜全般にいえることですが、ナスも連作障害を受けやすい特性があります。ナスを栽培する際は、新しい培養土、または、過去3~4年はナス科野菜の栽培に使用していない土を使用するようにしましょう。
連作障害とは、同じ科の野菜を連続して栽培することで、その科に特有の病原菌が土壌中で大量増殖し、また、その科が特に必要とする栄養分が著しく不足することによって土の栄養バランスが崩れ、結果として、うまく野菜が育たない状態に陥ることをいいます。
ナスは花が栄養状態のバロメーター
ナスは花が栄養状態のバロメーターになっているため、花の様子を毎日良く観察することが大切です。
ナスの生育が良好であれば、ナスの花は下の写真のように中心の雌しべが雄しべよりも長くなります(長花柱花)。ナスの花は基本的に下向きに咲くので、雄しべから花粉が落ちる際に、長く伸びた雌しべに効率よく付着し、自然着果することになります。。
周辺の雄しべのほうが、中央の雌しべよりも長い状態の花を「短花柱花」と呼びますが、これは栄養不足であることを示しています(花は咲いても、ほとんど着果しない)。短花柱花が多い場合は、即効性の肥料(可能であれば液肥)で追肥するようにしましょう。
ナスの花が落ちて着果しない原因
ナスの花は咲くのに、着果せず、落ちてしまうことがあります(落花)。ナスの着果障害の主な原因は以下の通りです。
- 高温・低温
気温が32度を超えると着果しなくなります。そのため、猛暑が続く8月は実が付きづらくなります。逆に、10月中旬以降は低温によって着果しづらくなります。 - 水分不足
水分が不足すると、水分だけでなく、栄養も吸い上げることが出来なくなるため、着果しづらくなります。 - 日照不足
光合成出来なくなるため、日差しが少ない梅雨の時期は着果しづらくなります。 - 栄養不足
追肥を定期的に行わないと、雌しべが短い「短花柱花」となり、着果しなくなります。 - 根詰まり・なり疲れ
更新剪定を行わずに大量のナスを収穫すると、徐々に株が疲れ、着果しなくなり、仮に着果しても光沢のない「ぼけナス」となってしまうことがあります。