中玉トマトの育て方

中玉トマトの育て方・栽培方法

トマトは代表的な夏野菜のひとつですが、生命力が強く子供でも簡単に育てられることもあり、家庭菜園では常に一番人気の野菜です。

この記事では糖度が高く食味が良いことで知られ、また、雨よけをしなくても裂果しづらい特性を持つ家庭菜園の人気品種「フルティカ(中玉トマト)」をプランターで種から栽培する方法をご紹介します。
(苗を購入して栽培する方は前半を適宜読み飛ばしてください)

基本データ
難易度 
名称・別名トマト(小金瓜)、赤茄子(あかなす)、蕃茄(ばんか)、唐柿(とうがき、とうし)、ミディトマト
科名ナス科
英名Tomato
原産地南アメリカ
播種適期4月中旬~5月上旬
種のまき方点まき
発芽適温昼間:28℃、夜間:20~22℃
生育適温15~25℃
発芽日数4~6日
最適プランターエアープランター600

Step 1:必要資材の準備

トマトをプランターで栽培するために、まずは必要となる資材や道具を揃えましょう。

はじめての家庭菜園でどれを買ったら良いか分からない場合は、この記事で使用している以下の資材一式を購入し、記載の手順通りに育てれば初心者でも失敗無く収穫することが出来ます。

タネ

雨よけをしなくても裂果しづらく、生育旺盛で育てやすい家庭菜園の人気品種です。中玉トマトとしてはトップクラスの糖度があり、皮も薄めなので、食味が非常に良いのが特徴です。

プランター

中玉トマトはたくさんの実をつけるので、土がたくさん入る大きめのプランターがおススメです。長い支柱を立てて栽培するので、エアプランター600のように、別売りの支柱ホルダーが取り付けられるものだと、簡単かつ確実に支柱を固定することが出来、とても便利です。

培養土

緩効性肥料入りの粒状培養土で、保水性、通気性、保肥性のバランスに優れています。

支柱

長さ 180 cm~210 cm、太さ11 mmのものがおススメです(セキスイ イボ竹 φ 11 mm x 210 cmなど)。

通販だと送料が高くなるので、近くのホームセンターや、園芸店で購入すると良いでしょう。表面がツルツルのものより、凹凸(イボ)があるもののほうが、麻ひもの固定がしやすいです。

肥料

窒素、リン、カリがそれぞれ8%含まれる、最も一般的な化成肥料です。信頼できるメーカーのものを選ぶようにしましょう。

ジョーロ

毎日の水やりに使用します。プランターの数が多くなってきたら、ホースリールの導入も検討してみてください。

Step 2:種まき

手順1
鉢底石を入れる
良く洗ったプランターに鉢底石を底が見えなくなるくらいまで入れる
*新品のゴールデン粒状培養土を使用する場合、この手順は不要です。
手順2
培養土を入れる
プランターに培養土を入れ、表面を平らにならす。
*プランターのふちギリギリまで入れずに、3 ㎝程度、余裕をもって入れましょう。
*タネをまくための「蒔き溝、蒔き穴」を作る必要はありません。
手順3
タネをまく
点まき。エアープランター600なら2点、各点4粒。

かぼちゃの種まき

手順4
タネに土をかぶせる
培養土をタネが完全に見えなくなるまで追加する(すでにプランターに入っている培養土を「寄せる」のではなく、新たにタネの上に培養土を追加)。
*このようにするとタネを蒔いた部分だけが少し高くなって株元の排水性が向上し、根腐れを予防することができます。
手順5
水やりをする
プランターの排水口から水が流れ出るまでたっぷりと水を与える。
*ホースリールを使用する場合は水勢を弱くし、土やタネが流れてしまわないよう注意。プランターは風通しの良い日なたに設置し、発芽するまでは毎朝1日1回の水やりを行いましょう。

Step 3:発芽・間引き

毎日水やりを行うと1週間ほどで順次発芽します(フルティカの発芽適温は、昼間28 ℃、夜間20 ℃~22 ℃です。寒さが残る時期では発芽しにくいため、ゴールデンウィーク頃の種まきがお勧めです)。

フルティカ:発芽

双葉が完全に展開し、本葉が出始めたタイミング(下の写真)で、初回の間引きを行って各点3株、プランター全体で6株とします。

トマト本葉

間引きの方法:株間が十分に広い場合は、苗を指でつまんでまっすぐ上に引き抜くのが最も手軽ですが、ピンセットを使うと、混み合っている箇所でも正確に間引くことが出来ます。また、密集して発芽してしまった箇所は(根が絡まり、残したい株まで一緒に抜けてしまう恐れがあるため)ハサミで根元から切り取ると安全・確実に間引くことが出来ます。

しばらくすると本葉が展開します。葉が重なり合うようになったらさらに間引いて各点2株としましょう。

トマト間引き

下の写真くらいのサイズになるまで各点2株を維持したら、最終間引きを行って各点1株、プランター全体で計2株とします。

トマト最終間引き前

最終間引き後は以下のようになります(右下に見えるのが、ハサミでカットした跡)。

最終間引き後

定期的な追肥が必要

トマトは栽培期間が長期となるため、定期的な追肥が必要です。緩効性肥料なら1か月おき、一般的な化成肥料なら2週間おきを目安として追肥しましょう。追肥の際は株元を避け、プランターのふちに沿って蒔くようにすると根が肥料焼けして痛んでしまう心配がありません。

Step 4:わき芽かき(1本仕立て)

最終間引き後、そのまましばらく育成すると、本葉の付け根から、小さな「わき芽」が出てきます。

トマトのわき芽

上の写真では少し分かりづらいため拡大すると、このように、各節から、わき芽(=側枝、腋芽、脇芽)が伸びていることが分かります。

トマトわき芽かき直前 

わき芽をこのまま放置しておくとどんどん成長し、栄養が分散してしまうため、わき芽は小さなうちにすべて折り取っておきましょう。

トマトのわき芽かきの方法ですが、晴れた日に、わき芽を指でつまんで、軽く倒すだけで簡単に折り取ることが出来ます。

折り取った後は、下の写真のようになります。

トマトわき芽かき後

トマトは生命力が強いため、この後も、どんどんわき芽が出てきますが、見つけ次第、わき芽かきを行うようにします。

すべてのわき芽を除去して1本仕立てとすることで、栄養が主枝に集中して実付きが良くなり、また、風通しが良くなることで、病気にも強くなります。

折り取った「わき芽」の活用方法

折り取ったわき芽は通常、廃棄しますが、7 ㎝程度にまで育ったわき芽を、培養土を入れた小さな鉢や育苗ポットなどにそのまま刺しておくと、再び根が生え、新たにもう一本、苗を増やすことが出来ます。

特別な土を使う必要は無く、余ったゴールデン粒状培養土で問題ありません。

また、水につけて根を出してから土に植えるような手間も必要無く、折り取ったわき芽をそのまま土に差しておくだけで立派に育ちます

Step 5:支柱立て

下の写真くらいのサイズになったら、支柱を設置し、麻ひもで主枝を誘引します(最初の花芽が付くタイミングが支柱を立てる時期の目安です)。

本支柱を立てる適期

エアープランター600と併せ、専用の支柱ホルダーを使用すると、以下のように簡単に支柱を固定することが出来、強風で支柱が倒れてしまう心配もありません。今回は太さ11 mm, 長さ2100 mmの支柱を使用しています。

支柱を設置

麻ひもによる支柱への誘引の方法ですが、下の写真のように、トマトの主枝の側はゆるくし、支柱側をしっかり結ぶようにするのがコツです。

麻ひもによる誘引

Step 6:育成・収穫

週に一回程度、わき芽かきと支柱への誘引を繰り返しながら、ぐんぐんまっすぐ上へと成長させます。

トマト1本仕立て

花も咲き始めますが、トマトの場合は1つの花の中に雌しべと雄しべが存在し、花が開く時にはすでに受粉が完了しているため、人工授粉は必要ありません。

トマトの花

主枝に近い側から順番に花が落ち、自然に実が付きます。

トマトの着果

色は青いまま、中玉トマトのサイズになるまでゆっくりと肥大します。

トマトがどんどん肥大

トマトが赤く色づいたら、順次収穫しましょう。トマトの収穫方法には、1粒ずつ収穫する方法と、房ごとハサミでカットして収穫する方法がありますが、房の手前と先では熟度にかなり大きな差があるため、色づいた実から1粒ずつ収穫するのがお勧めです。

収穫適期のフルティカ

是非、収穫したての芳醇なトマトを味わってみてください!

栽培のポイント・注意点

中玉トマトをプランター栽培するためのポイント

今回ご紹介した「フルティカ」の栽培の要点は以下の通りです。品種によらず、中玉トマト、ミニトマトは基本的に同様に栽培することが出来ます。

  1. すべてのわき芽を除去し1本仕立てとする。
  2. 最初の花房を含め、すべての花房を着果させ、収穫する(摘果は不要)。
  3. 人工授粉は不要。
  4. 主枝が支柱の先端にまで伸びたら主枝の先端をハサミでカット(摘心)。但し、生育が旺盛な場合は、支柱にゆるく巻き付けるように誘引し直すことで、摘心せず、より多く収穫することも可能。
  5. 特に強い光を好むため、直射日光の当たる日当たりの良い場所で栽培。

トマトの糖度:水を控えめにすると甘くなる

トマトは着果後、乾燥気味に育てると、実の糖分が凝縮されて甘くなる性質があります。

逆に、水を与えすぎたり、雨の日が続くと、実に含まれる水分が増えすぎて「裂果」や「水っぽさ」の原因となります。

家庭菜園では雨除けが難しく厳密な水分管理が困難なため、ハウス栽培を前提としたプロ向け品種ではなく、直接雨に打たれても裂果しづらく、糖度も上がりやすい品種(フルティカなど)を選ぶようにしましょう。

連作障害に注意

ナス科野菜全般にいえることですが、トマトも連作障害を受けやすい特性があります。トマトを栽培する際は、新しい培養土、または、過去3~4年はナス科野菜の栽培に使用していない土を使用するようにしましょう。

連作障害とは?

連作障害とは、同じ科の野菜を連続して栽培することで、その科に特有の病原菌が土壌中で大量増殖し、また、その科が特に必要とする栄養分が著しく不足することによって土の栄養バランスが崩れ、結果として、うまく野菜が育たない状態に陥ることをいいます。

鳥害に注意

トマトは病虫害の心配はそれほどないのですが、真っ赤に熟した果実が鳥に狙われると、せっかくの果実が一瞬ですべて台無しになってしまいます。通常は必要ありませんが、ムクドリなどの鳥類が特に多い地域で栽培する場合は、防虫ネットで株全体をぐるっと覆っておくと安心です。

トマトは葉が栄養状態のバロメーター

トマトは葉の状態から栄養状態を判断することが出来ます。特にトマトは窒素過多になりやすく、初心者ほど肥料をあげすぎてしまう傾向があるので、注意しましょう。

トマトの栄養状態の判別方法
  • 肥料が不足
    葉が斜め上に向かって伸びる。葉の緑色が薄く、主枝も細い。
  • 肥料の量が適切
    葉が地面と平行に伸びる。
  • 肥料がやや多すぎる
    葉が下向きに垂れ下がり、葉が異常に大きくなり、色も濃くなる。
  • 肥料が明らかに多すぎる
    葉がくるくると内側に巻く。花が咲いても、すぐに落花し結実しない(=つるボケ)。

水分量が適切であることを前提としています。肥料が足りなくても雨の後は葉が下に垂れ下がることがあり、また、真夏の炎天下では一時的に葉がしおれて垂れ下がることがあります。

6 COMMENTS

たかしん

ネット検索していてココにたどり着きました。
今、中玉トマトをプランターで栽培しているのですが、どうしても日光に当てると葉っぱがしんなりしてしまい、仕方なく遮光シートの下に置いてます。
諸事情により小さめのプランターで、入れ替える事ができないので土が少ないのが気になっています。
でも何とか蕾をつけたのでこのまま見守っているのですが、やはり直射日光に当てた方が良いのでしょうか?
下の方の葉は元気なのですが上の方の葉が少ししんなりしています。
水は午前中にたっぷりあげましたが土が乾いてなさそうな時はあげない日もあります。
梅雨なので雨が続く日がまだありそうなので心配してます。

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Yu-Rin

たかしんさんへ

ご質問ありがとうございます。
どの植物も基本的には、根から水を吸い上げて、葉に送り、葉から水分が蒸散されますが、たかしんさんのトマトの場合は、根から水を吸い上げる速度よりも、葉から水分が蒸散する速度のほうが早くなってしまっているために、結果として、葉がしおれてしまっているものと思われます。

「土量が少ない」とのことですので、土中の水分が枯渇し、十分に水を吸い上げられなくなってしまっている、または、そもそも根の張りが弱いことのいずれかに根本的な原因がありそうです。

この場合、土中の水分量を安定させ、根張りを良くするために、より大きなプランターに植え替えるのがセオリーですが、それが難しいのであれば、すでにたかしんさんがされているように、遮光シートで、葉からの水分の蒸散を抑えることで、根からの水分の吸い上げ速度とのバランスを保つのは良い対処法だと思います。

トマトは夏野菜ではあるものの、生育適温は15~25℃で、30℃を超えると受粉が成立せずに結実しないことが多くなります(品種によって異なります)。日本の夏は35℃を超える暑さになりますので、その観点からも、遮光シートで少し温度を下げてあげたほうが結実しやすくなることがあります。

一方、日照不足により、生理障害、病気が発生しやすくなりますので、もし可能であれば、涼しい日は直射日光に当ててあげるようにすると、より元気に育ってくれると思います。

Yu-Rin

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たかしん

ご説明有難うございます。
やはり水分量の調節は本当に難しいですね。
なるべく日当たりを良くして水分を多めにあげて様子を見てみます。
1つでも結実してくれれば嬉しいのですが…。

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ひろ

5年前から参考にさせてもらっています。
以前はもっと早い時期(1月くらい)にポットに種まきをして成長後にプランターに植え替えていました。久しぶりにサイトを訪ねたら春にプランターに直まきに替わっていました。何か理由はありますか?とても気になります。

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Yu-Rin

ひろさんへ

こんにちは。ご訪問&コメントありがとうございます。
5年もの間、参考にして頂けていたとのこと、とても嬉しいです!

はい、ひろさんのご指摘の通りで、確かに以前は、真冬にポット播きして、室内育苗し、霜が降りなくなった頃に、外に出して、定植する、という流れをご紹介していました。
こうすれば、少し暖かくなって来た頃には収穫を始めることができるので、結果としてプランターの少ないスペースでも、かなりたくさんのトマトを収穫することが出来るからです。
ただ、「初心者向け」というにはやや高度な内容で、慣れないと、いろいろな意味で、難しさがあったように思います。

あれから、ホームページの方向性を整理し、2019年に全面リニューアルを行いました。すべての野菜を育てなおし、写真もすべて撮り直し、記事もすべてゼロから書き直しています。
その際に、重視したのは「初心者に優しいサイト」でありたいということです。
これから家庭菜園をはじめてみたいと思った方が、ネットで検索し、私の記事を偶然見たときに「なんか難しそう・・・」と思ってしまうのではなく、「これなら私でも出来そう!」と感じてほしいと思いました。

なので、リニューアル後は、これから家庭菜園を始めてみたい、または、始めようかまだ迷っている方の一助となるような記事づくりを目指し、出来るだけ手間が掛からず、簡単かつ確実に収穫出来る方法を記載するようにしました。
結果的に、家庭菜園愛好家が増えて、多くの人にプランター菜園の楽しさが伝えられたらと願っています。

応用的な記載が少なくなり、ひろさんには、少し物足りない記事が多くなってしまったかもしれませんが、もっともっとプランター菜園、家庭菜園の楽しさを多くの人に知ってもらいたいという気持ちで記事を書いていますので、ご理解頂ければ嬉しいです。

Yu-Rin

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ひろ

丁寧な回答ありがとうございました。そうですよね、一般的なサイトでは直まきですしとっつきやすいのかも。私も冬に蒔いてもうまく育たず結局春に蒔き直したこともありました。でもやり直しがきく分、助かっていた面もあるんです。出来れば丈夫な苗を育てたいと今年もすでに種まきをしました!これからも頑張ってみます。

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