アスパラガスは播種から収穫まで、2年ほど掛かりますが、一度植え付ければ、10年以上、収穫することが出来ます。
市販品のように太いアスパラガスを収穫するためには、大容量のプランターを使用し、1~2年目は収穫せず株の養成のみを行って強い株を作ることがポイントです。
この記事では収量性が高い太茎アスパラガス品種である「ウェルカム」をプランターで種から栽培する方法をご紹介します。
基本データ | |
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栽培難易度 | |
名称・別名 | アスパラガス、アスパラ、オランダキジカクシ、オランダウド、マツバウド |
科名 | キジカクシ科(クサスギカズラ科)(旧分類:ユリ科) |
英名 | Asparagus |
原産地 | 南ヨーロッパ |
播種適期 | 4月上旬~5月上旬 |
種のまき方 | 点まき |
発芽適温 | 25~30℃ |
生育適温 | 15~25℃ |
発芽日数 | 2~3週間 |
最適プランター | エアープランター600 |
Step 1:必要資材の準備
アスパラガスをプランターで栽培するために、まずは必要となる資材や道具を揃えましょう。
はじめての家庭菜園でどれを買ったら良いか分からない場合は、この記事で使用している以下の資材一式を購入し、記載の手順通りに育てれば初心者でも失敗無く収穫することが出来ます。
タネ
病気に強く、生育旺盛で、茎が太く、収量性も高い、家庭菜園の人気品種です。
プランター
アスパラガスは広く、深く、根を張るので、出来るだけ大きく、深さのあるプランターを選ぶようにしましょう。
*エアプランター600は、この記事で使用している「レリーフプランター深型600」の後継製品です。
培養土
緩効性肥料入りの粒状培養土で、保水性、通気性、保肥性のバランスに優れています。
肥料
窒素、リン、カリがそれぞれ8%含まれる、最も一般的な化成肥料です。信頼できるメーカーのものを選ぶようにしましょう。
ジョーロ
毎日の水やりに使用します。プランターの数が多くなってきたら、ホースリールの導入も検討してみてください。
Step 2:発芽処理(1年目のみ)
アスパラガスは他の野菜とは異なり、普通にそのまま種を蒔いても発芽しません。そこで播種の前に、発芽促進処理(催芽処理)を行う必要があります。
アスパラガスの種は表がつるつるで、裏が巾着袋を閉じたような形をしています。
種の発芽を促進するため、タネをまく前に、24時間~48時間程度、水に浸してしっかり吸水させておきましょう。
Step 3:種まき(1年目のみ)
良く洗ったプランターに鉢底石を底が見えなくなるくらいまで入れる。
*新品のゴールデン粒状培養土を使用する場合、この手順は不要です。
プランターに培養土を入れ、表面を平らにならす。
*プランターのふちギリギリまで入れずに、3 ㎝程度、余裕をもって入れましょう。
*タネをまくための「蒔き溝、蒔き穴」を作る必要はありません。
催芽処理済みのタネを使用して、点まき(丸印があるところに各1粒)。
培養土をタネが完全に見えなくなるまで追加する(すでにプランターに入っている培養土を「寄せる」のではなく、新たにタネの上に培養土を追加)。
*このようにするとタネをまいた部分だけが少し高くなって株元の排水性が向上し、根腐れを予防することができます。
プランターの排水口から水が流れ出るまでたっぷりと水を与える。
*ホースリールを使用する場合は水勢を弱くし、土やタネが流れてしまわないよう注意。プランターは風通しの良い日なたに設置し、発芽するまでは毎朝1日1回の水やりを行いましょう。
Step 4:育苗・間引き(1年目のみ)
種まきから2~3週間ほどで順次発芽します。発芽直後はこのようにアスパラガスとは思えない草姿をしています。
発芽から1日もすると、少しアスパラガスらしくなりますが、市販のアスパラガスとは全く異なり、まだ1 ㎜程度の細さです。
半月ほどで、松の葉のような針状の「擬葉=ぎよう」と呼ばれる器官(厳密には、葉ではなく茎)が展開し、市販のアスパラガスとは似ても似つかない姿へと成長します。擬葉が展開した頃から定期的な追肥を忘れないようにしましょう。
擬葉が展開して1~2週間すると、また新たな芽が出てきます。これは「若茎=わかくき」と呼ばれるもので、タネから発芽したわけではなく、タケノコやニラのように根が分けつして新しい若茎(新芽)が誕生したことによるものです。このタイミングで(若茎ごと)間引きを行い、各点1株、プランター全体で2株としましょう。
アスパラガスは栽培期間が長期となるため、定期的な追肥が必要です。緩効性肥料なら1か月おき、一般的な化成肥料なら2週間おきを目安として追肥しましょう。追肥の際は株元を避け、プランターのふちに沿って蒔くようにすると根が肥料焼けして痛んでしまう心配がありません。
Step 5:育成(養成)(1~2年目)
間引きを終えてしばらくすると、徐々に草丈が伸びてきます。風による倒伏を防止するため、下の写真のようにプランターに支柱を6本設置し、麻ひもを巻き付けておきましょう。
12月になると地上部はすっかり枯れ上がってしまいます(冬枯れ)。
枯れたまま放置すると最終的に腐り、病気の原因となるので地際からはさみでカットし、春になるのを待ちましょう。
翌年、春になると、一斉に新芽が出てきます。2年目も株を養成するため収穫せずに葉(擬葉)を茂らせ、1年目と同様な管理を行い、冬になって地上部が枯れあがったら再び地際からハサミでカットしておきましょう。
Step 6:収穫(3年目以降)
3年目の春になって市販のアスパラガスのように太い新芽(若茎)が出てきたらいよいよ収穫です。
アスパラガスの収穫方法ですが、地際からハサミで切り取って行うのが一般的ですが、指で折り取る方法がお勧めです。硬く筋っぽいところ(地際付近)は折れないので、指で簡単に折れるところから収穫することで美味しいところだけを簡単に摘み取ることが出来ます。
3年目も株を養成するため2~3週間程度の収穫に留め、以降は収穫せずに葉を茂らせましょう。同様に、4年目は1カ月半程度、5年目以降は2カ月間程度収穫し、以降は葉を茂らせて株を養成すれば10年以上アスパラガスの収穫を楽しむことが出来ます。
栽培のポイント・注意点
長期の栽培が必須
他の野菜と比べると、アスパラガス栽培はかなり根気が必要です。特に2年目は多少であれば収穫可能ですが、収穫しすぎると枯れてしまう場合もあるため、収穫を急がずに3年目まではじっくりと株を養成することが大切です。
毎年冬は地上部を刈り取る
毎年冬になると、地上部が枯れ上がるので、病原菌を繁殖させないためにも忘れずに地上部を刈り捨てるようにしましょう。
大型のプランターが必須
当サイトでは特段の理由が無い限りは培養土の無駄を減らすため浅型のプランターを使用していますが、アスパラガスの場合は根が大きく育つため、必ず底が深い大きめのプランターを使用するようにしましょう。
休眠中に培養土をリフレッシュ
10年以上の栽培となるとどうしても培養土が微細化し排水性も悪くなってしまうため、定期的な培養土の入れ替えが必要です。
ニラのように株を掘り起こして新しいプランター+新しい培養土に入れ替えても良いのですが、アスパラガスの休眠期間中(12月~3月)に、(株を掘り起こさず)微細化した表土のみを取り除き新しい培養土を追加すると、手軽にプランターの培養土を入れ替えることが出来ます。
まずは表土を取り除きます。培養土が微細化(微粉化)しているのは表土のみで、内部の土は良好な団粒構造を維持していることが多いです。
取り除いた分だけ、新しい培養土を入れれば培養土のリフレッシュ作業は完了です。
表土を取り除いた時に、内部まで培養土の状態が悪化しているようであれば、アスパラガスの株を丁寧に掘り出し、新しいプランター+培養土に植え替えるようにしましょう(目安として2~3年に1回程度)。
アスパラガスの豆知識
アスパラガスはなぜ双葉が出ないの?
単子葉植物だからです。
植物には色々な分類がありますが、アスパラガスは、単子葉植物に分類されます。ここでは単子葉植物と双子葉植物の違いについて簡単に解説したいと思います。
単子葉植物と、双子葉植物の一番の違いは、種から最初に出る葉の形状です。
また、単子葉植物の根は、主根がはっきりしない「ひげ根」と呼ばれる形状をしています。一方、双子葉植物は主根から側根が伸びる形状をしています。
大半の野菜は双子葉植物なので、種を植えると必ず最初に双葉が出る印象があると思いますが、アスパラガスは単子葉植物なので、双葉が出ることはないというわけです。
単子葉植物の野菜としては、アスパラガスの他にも、ニラ、ネギ、玉ねぎ、トウモロコシなどがあります。
毎日目にしていても、言われなければなかなか気づくことの出来ない特徴が各野菜ごとにたくさん存在します。家庭菜園をより深く楽しむためにも、このような特性にも是非着目してみてください。