「家庭菜園を趣味にしたいけど、何から始めたら良いのか分からない」という方のために、家庭菜園(プランター菜園)を行う上で最低限必要となる知識やコツをまとめました。
最初にこのページで家庭菜園の全体像を把握してから、当サイトの個別コンテンツを読み進めて頂くと、効率良く家庭菜園の知識やスキルを身に着けることが出来ます。
家庭菜園をはじめるならプランター菜園がおススメ!
家庭菜園と一口に言っても、大きく2つに大別することが出来ます。これから家庭菜園をはじめようと思っている初心者にはプランター菜園がおススメです。
- 市民農園
近所の畑の一部を間借りして野菜を栽培する方法。レンタル農園、貸し農園、体験農園などとも呼ばれます。 - プランター菜園
自宅の庭にプランターを設置し、その中で野菜を栽培する方法。コンテナ栽培、鉢栽培、袋栽培、ペットボトル栽培なども広義にはプランター菜園の一種といえます。
プランターを設置する場所がベランダの場合はベランダ菜園、キッチンであればキッチン菜園などと呼ばれることもありますが、これらもプランター菜園の一形態です。
市民農園
昨今の菜園ブームで、プランター菜園だけでなく、市民農園も人気が高まっていますが、好条件の畑ほど倍率が高くなかなかスタート出来ない、各畑のルールに従わなければならず自由な栽培が出来ないなど、色々な意味で周囲の影響を強く受けることが避けられない欠点があります。
また、自宅からの移動負担が大きく、現実的に毎日野菜をチェックすることが難しいので、病虫害に気づいた時にはもう手遅れ、ということが多々あります。そこで管理の大半をプロが行ってくれる「体験農園」が急増しているのですが、便利な分だけ管理費用も高額で、初心者にはややハードルが高く感じられると思います。
プランター菜園
プランター菜園は、思い立った瞬間に気軽に始められる上に、本格的な農具も不要なのでお金もほとんど掛かりません。自宅で栽培するのできめ細やかな手入れをすることが出来、毎日成長を家族で観察しながら、栽培を楽しむことが出来ます。
市民農園とは異なり畑まで移動する負担が無く、費用も体力もそれほど必要無いので、長く続けやすいことも大きな魅力といえます。
手軽に始められるプランター菜園で家庭菜園の楽しさや、収穫の喜びを知ると、知識やスキルも自然と身に付いてきますが、10年以上続けてもまだまだ上があるという「趣味としての深み」があることが、プランター菜園を生涯に渡って楽しむ方が多い理由となっています。
プランターでは立派な野菜は育たないと思い込んでいる方がいるかもしれませんが、そんなことはありません。夏の風物詩のスイカだって、ちょっとしたコツを守るだけで、プランター菜園で立派に育てることが出来ます!
1.栽培計画を立てよう
プランター菜園を始めるにあたって、一番最初にやらなければならないことは、栽培計画(菜園計画)を立てることです。栽培計画とは、いつどのタイミングで、どの野菜を育てるか、年間の計画を立てることをいいます。
野菜のタネを蒔くのに適した時期は、一年の中でも限られているので、適期を逃さないよう計画的に栽培するようにしましょう。
育てる野菜を決める:初心者向け野菜3選!
まず、どの野菜を育てるのかを決めましょう。どの野菜を育てたいかで自由に決めて構いませんが、難易度の高い野菜は避けるのが無難です。
全く未経験の初心者がプランター菜園をはじめるのに特にお勧めの野菜は、ベビーリーフ、ミニトマト、スイスチャードです。
これらはいずれも、病虫害を受けづらい、栽培が容易、彩りが鮮やか、味にクセが無く野菜嫌いの子供でも食べやすい、トゲや枝でケガをする危険が無い、という特徴があるので、特に、小さな子供の食育を兼ねて、プランター菜園にチャレンジしたいという方にもおススメです。
ベビーリーフ:お店で購入すると少量でもそれなりの値段がしますが、プランターで栽培すれば、誰でも簡単に、大量に収穫することが出来ます。風通しや日当たりなどの条件が悪くてもまず失敗することはありません。
ミニトマト:十分な日当たりが確保できるのであれば、ミニトマトもお勧めです。採れたてのミニトマトは風味や甘みが強く、プランター菜園ならではの格別な味わいを楽しむことが出来ます。
スイスチャード:スーパーではあまり見かけることが無く、栽培中の彩りもカラフルで美しいので、家庭菜園ならではの楽しみを満喫することが出来ます。
タネをまく時期を決める
育てる野菜を決めたら、次に、タネをまく時期を決めましょう。タネをまく時期は非常に重要で、時期を誤ると、発芽せずに失敗したり、収穫前に枯れてしまうことがあります。
いつタネをまけば良いのかはタネ袋の裏に記載されているのですが、タネはプロの農家も使用するので、必ずしも一般家庭で野菜を育てる前提の記載とはなっていない点に注意してください。
当サイトでは一般家庭で栽培することを前提に、野菜毎の種まきのベストタイミングを一覧できるようにしてあります。野菜毎の詳しい育て方についても種まきカレンダーからリンクしているので、是非栽培計画を立てる際に役立ててください。
ほとんどの野菜は、4月~5月上旬、または、9月がタネをまくベストタイミングとなっています。
栽培技術が向上し、ビニールトンネル保温などのスキルを身につければ適期以外でも栽培することは出来るのですが相応の技術力を必要とするので、事前にしっかりと計画し、誰でも簡単に栽培できるベストタイミングにタネが蒔けるように準備しましょう。
栽培方法を調べる
野菜を決めて、春作 or 秋作を決めたら、次に、その野菜の育て方を調べておきましょう。
当サイトでは50種類以上の野菜の育て方を掲載しているので、一般的な野菜であれば、ほぼサイト内で見つけることが出来ます。
野菜によっては、あんどん型支柱などの通常とは異なる特殊な用具を必要とする場合があるので、栽培全体の流れだけでなく、必要なものを予め確認しておくようにしましょう。
プランターを設置する場所を決める
プランターを設置出来る場所は、各家庭の事情によってかなり限られているとは思いますが「風通しが良く、日当たりの良い場所」が理想です。
ただし、野菜によって必要な日照量は大きく異なります。例えば、夏野菜は強い直射日光を必要とするので、日陰になりづらい場所にプランターを設置する必要がありますが、ミョウガや、ハーブ類は半日陰のほうがむしろ良く育つので、軒下など、あまり直射日光が当たらない場所のほうが向いています。
プランターは移動できる強みがあるので、育てる野菜の特性や、時期に合わせ、最適な場所を選んで設置するようにしましょう。
一部のマンションでは、ベランダでのプランター菜園(ベランダ菜園)が規約で禁止されていることがあります(避難経路確保のため)。マンションにお住まいの方は事前に管理規定を確認しておきましょう。
2.初心者向けの品種を選ぼう
育てる野菜を決めたら、次に、品種を選びましょう。
ネットショップや大手園芸店には、同じ野菜でも数十種類の品種のタネが並んでいて、どれを選べば良いのか、初心者にはなかなか分からないと思います。
以下に挙げる4つのポイントを守れば、初心者でも失敗することなく、はじめてのプランター菜園を成功させることが出来ます!
F1種を選ぶ
野菜や花のタネは、F1種(エフワンしゅ)と、固定種(こていしゅ)に大別することが出来ます。
F1種のほうが栽培が簡単なので、特にはじめて家庭菜園・プランター菜園にチャレンジする際は、F1種を選ぶと良いでしょう。
F1種と、固定種、どちらであるかは、タネ袋をみれば判別することが出来ます。
- F1種
タネ袋に「F1」「一代交配」「ハイブリッド種子」「一代雑種」「〇〇交配」などと記載されている。 - 固定種
タネ袋に「固定種」「育成種」「一般種」「在来種」「〇〇育成」などと記載されている。
F1種には様々なメリットがあるのですが、主なものは以下の通りです。
- 生育旺盛
- 発芽や成長がよく揃う
- 病気に強い
- 収量が多い
- 品質が安定
F1種は良いことづくめなのかといえば、必ずしもそうとは限りません。個人の嗜好なのでなんとも言えないのですが「固定種のほうが美味しい」という声が少なからずあるのも事実です。
実際、現在流通している野菜の99%以上をF1種が占めていますが、固定種が中心であった昭和の頃の野菜のほうが美味しかったように記憶している方も少なからずいらっしゃると思います。
まずは栽培が容易なF1種で栽培スキルを磨き、慣れてきたら、固定種の栽培にも挑戦し、味や風味の違いを楽しんでみるのも良いでしょう。
極早生種を選ぶ
野菜の品種は生育の速さや、収穫までに要する日数によっても分類することが出来ます。
必ずタネ袋に記載されているので、家庭菜園・プランター菜園初心者は、生育が旺盛で、短期で収穫することの出来る「極早生種」「早生種」を選ぶようにしましょう。
- 極早生(ごくわせ):非常に成長が早い
- 早生(わせ):成長が早い
- 中生(なかて):成長速度は普通
- 晩生(ばんせい、おくて):成長が遅い
- 極晩生(ごくばんせい):非常に成長が遅い
生長が早く収穫までの栽培期間が短いほど、病虫害を受ける機会も少なくなるので、無事に収穫出来る可能性が高く、結果として失敗しづらくなります。
晩抽性種を選ぶ
レタス類、ツケナ類など、葉を食用とする野菜は、栽培中に花が咲いてしまうと、葉が硬くなり、食用に適さなくなってしまいます。このように花が咲いてしまう現象を「抽苔(ちゅうだい)」と呼びます。
栽培中に抽苔してしまうと収穫出来なくなってしまうことから、品種改良によって花を咲きづらくした「晩抽性」品種が多数市販されています。
晩抽性の品種を選べば、多少管理が悪くても、抽苔による失敗を回避することが出来るので、特に、プランター菜園初心者にはお勧めです。
矮性種を選ぶ
プランター菜園の場合、あまりに背丈の大きな野菜を育てると重心のバランスが悪くなり、プランター自体が風で倒れやすくなってしまうので、特に草丈が2メートルを超えるような大型野菜は、小型に改良された品種(矮性種:わいせいしゅ)を選ぶようにしましょう。
また、矮性種のほうが(ミニ人参、ミニ白菜、ミニカボチャなど)収穫までに要する栽培期間が短く、食味も良い上に、栽培スペースもコンパクトで、調理も容易なので、大型野菜を育てる際も矮性種がおススメです。
野菜毎の育て方のページにおススメの品種を記載しているので、品種選びの参考にしてください。
3.プランター菜園に最低限必要なものを揃えよう
育てる野菜・品種・時期が決まったら、プランター菜園を行ううえで最低限必要なものを一式買い揃えましょう。
タネをまく時になって足りないものがあることに気が付くと、栽培をスタートすることが出来ず、結果として種まきのベストタイミングを逃してしまうことになるので、少なくとも半月以上の余裕を持って早めに準備しておくことをお勧めします。
野菜のタネ
先に記載した通り、品種によって育てやすさが大きく異なるので、プランター菜園に慣れるまでは「F1」「極早生」の育てやすい品種を選ぶようにしましょう。
タネをまくタイミングで慌てて注文しようとしても、人気品種は売り切れていることが多いので、早めに計画して、発注・確保しておくことが大切です。
プランター
プランターは、大きければ大きいほど、野菜の生育には有利なのですが、培養土のコストや、取り回しなどの面では不利になります。
レリーフプランター650(16リットル)は汎用性が高く、ほとんどの野菜を無理なく育てることが出来るので、いくつか用意しておくと便利です。
素材や、サイズ、機能性の違いなどの詳細については、以下をご覧ください。
培養土
野菜を美味しく育てるためには、専用の土(培養土)が必要です。
価格もピンキリで、非常に多くの培養土が流通していますが、「野菜用」「元肥入り」と記載されているものを選ぶようにしましょう。
培養土選びのポイントについては、以下をご覧ください。
肥料
肥料は野菜の成長を促進する効果があります。
肥料にも色々な種類、銘柄があるのですが、はじめてプランター菜園に挑戦する初心者には、効き目が緩やかな「緩効性肥料」がおススメです。
初心者の場合、肥料のやりすぎ、やり忘れ、偏りなどが想定されますが、多少管理が不適切であったとしても、緩効性肥料であれば実害が生じることは少なく、シビアな管理も不要なので、初心者でも失敗せず野菜を収穫することが出来ます。
プランター菜園1年目は緩効性肥料だけで十分ですが、2年目以降は、以下を参考に、緩効性肥料、化成肥料、液肥の3種類を常備して使い分けることにもチャレンジしてみてください。
ジョーロ
プランター菜園では、毎日水やりをすることになるので、お気に入りのジョーロを1つ用意しておきましょう。
当サイトでは、安価で機能性にも優れるトンボジョーロを長年愛用し、水やりや、液肥の希釈散布などに利用しています。
ジョーロ選びのポイントは、以下で詳しく解説しているので、興味がある方はご覧ください。
何らかの理由で、タネまきのベストタイミングを逃してしまった場合は、苗を購入して植え付けるようにしましょう。
タネとは異なり、欲しい品種が購入できることは稀なのですが、タネから育てるよりも手軽で、遅れも取り戻すことが出来ます。
苗は品質のバラツキが大きく、初心者には見極めが難しいので、最初のうちは管理が行き届いている園芸専門店で購入することをお勧めします。
4.いよいよプランター菜園スタート!
プランター菜園を始めるために必要なものがすべて揃ったら、いよいよ、プランター菜園のスタートです!
最初は覚えなければいけないことが山ほどあるように感じられると思いますが、実は、家庭菜園における野菜の育て方というのは、野菜の種類に拠らずほぼ共通しています。
基本的な野菜の育て方の手順を予め理解しておけば、各野菜の育て方のページに記載されている各手順の本質的な意味も、より理解しやすくなります。
野菜をプランターで栽培するための基本手順
プランターに培養土を入れて表面を平らにならしたら、タネをまき、軽く培養土を掛けてタネが見えなくなるように埋め、水やりをします。
種まきの方法に関する詳細は以下を参照してください。
タネには発芽に光のエネルギーを必要とするものと(好光性種子)、暗いほうが発芽しやすいもの(嫌光性種子)があります。好光性種子はタネを浅く埋め、嫌光性種子は深く埋めるのがコツです。
それでもうまく発芽しない場合は、以下のページをチェックしてみてください。
発芽前は毎朝一日一回、発芽後は、土の表面が乾いたらプランターの排水口から水が流れ出すまで、たっぷりと水を与えます。
真夏の日中や、冬季の夕方の水やりは避けましょう。
水やりのコツについて詳しくは、以下をご覧ください。
タネが発芽して、本葉が出始めたら、初回の間引きを行い、以降、成長に伴って葉が混み合う度に段階的な間引きを行って、最終株間とします。
間引きのポイントは、以下に詳しく記載しています。
栽培期間が2か月以内の野菜を、元肥入りの培養土で栽培する場合は、基本的に追肥は不要です。
果菜は一般的に栽培期間が長期となるので、定期的な追肥を行って肥料切れしないように注意しましょう。
初心者にはマイルドに長く効き続ける緩効性肥料がおススメです。
葉菜:手で引き抜いて収穫すると葉が土で汚れて、後から洗う手間が生じるので、株元にハサミや、ナイフを入れて根元からカットするのがおススメです。
果菜:食用部をハサミでカットするだけで収穫出来ます。果菜はトゲがあるものも多いので、厚手の軍手を準備しておくと安心です。
根菜:地上部を束ねて、まっすぐ上に引き抜いて収穫する方法(ダイコンなど)と、プランターを横転させて土ごと取り出す方法(ジャガイモなど)があります。
最後に
当サイトでは、50種類以上の野菜の育て方を掲載しています。初心者向けの野菜はすでにほぼ網羅していると思いますので、野菜毎の詳しい栽培方法や注意点についてはそちらをご参照ください。
また、似たような野菜は栽培方法も基本的に同じです。例えば、漬け菜の一種である「べかな」が見つからなくても、同じ漬け菜の一種である「小松菜の育て方」を参考にすれば、まったく問題なく育てることが出来ます。
とても長い記事になってしまいましたが、プランター菜園をはじめるために必要となる知識はここにすべて網羅されています。
このページをきっかけに、ひとりでも多くの新たなプランター菜園愛好家=仲間が誕生することを心から願っています!
最後まで読んで頂きありがとうございました。
こちらを拝見し今年からプランター菜園を始めました。
Yu-Rinさんはほとんど(全て?)の野菜をタネから育てているようですが、苗から育てるデメリット、メリットなどがあれば、教えていただけないでしょうか。
タケルさんへ
コメントありがとうございます。
当サイトが良いきっかけとなったようでとっても嬉しいです!
野菜の苗から育てる、メリット・デメリットですが、まとめると以下のようになります。
◆苗から育てるメリット
・発芽管理や育苗が不要で、より手軽に、簡単に育てることが出来る。
・接ぎ木苗を購入すれば、栽培難易度を大幅に下げることが出来る。
・家庭菜園で少しだけ育てたい場合、ブランドのタネ1袋を買うよりも、苗1鉢を購入したほうが安い。
◆苗から育てるデメリット
・苗として販売されている野菜の種類は限られている。
・自由に品種を選べない。
・事前に購入して準備しておくことが出来ず、販売期間も短いので、確実な苗の確保が難しい。
また機会があれば、このような情報もまとめて記事化しておきたいと思います。
是非、家庭菜園を楽しんでください!
Yu-Rin
こちらのサイトを参考にさせて頂き、今年から家族で家庭菜園を始めました。
先ほど種まきが終わり、後は発芽を待つのみです。
いろいろとわからないことが多かったのでとても助かりました!
山川さんへ
ご訪問頂きありがとうございます!
最初は色々と覚えなければいけないことが多く大変かと思いますが、家庭菜園はやってみると、意外と簡単に出来てしまうものなので、是非、ご家族で楽しみながら、家庭菜園ライフを満喫してください!
Yu-Rin
今年から家庭菜園をはじめようと思い、書籍を2冊購入したのですが、結局肝心なところが分からず「もやっと」していたのですが、全部「スッキリ」しました!
ありがとうございます!
どさねこさんへ
ご訪問ありがとうございます!
お役に立てたようでとても嬉しいです!
書籍と違い、Webは文字数やページ数に制約が無い上に、随時情報をアップデートすることも出来るので、そうした強みを活かして、家庭菜園初心者に役立つ情報を発信できればと考えています。
最初は色々分からないことが多いと思います。各ページ、コメント出来るようにしてありますので、遠慮なくお気軽にご質問ください。
Yu-Rin